抄録
【目的】
当院は平成18年1月よりNST(栄養サポートチーム)を立ちあげ、その中で摂食嚥下の回復がリハビリテーション(RH)に求められた。NSTの多くは肺疾患・脳血管疾患が対象である。今回新しい知見の一つとして、摂食前に、身体機能の直前RHを行うことで、栄養状態が改善したのでここに報告する。
【対象および方法】
当院入院の患者のALB値低値症例(胃瘻造設なし)。平均年齢(83歳)、男3名・女11名を以下の2系統4群に分類したケースコントロールスタディである。
1a+b群:直前RHと嚥下RH実施群(N=7)
1a群:肺疾患で直前RHと嚥下RH実施群(N=3)
1b群;脳血管疾患で直前RHと嚥下RH実施群(N=4)
2a+b: 摂食嚥下RH実施群(N=7)
2a群:肺疾患で摂食嚥下RH実施群(N=4)
2b群:脳血管疾患で嚥下RH実施群(N=3)
直前RHプログラム;摂食1時間以内に1単位の運動療法(1.姿勢調整、シーティング、坐位バランス、2.頚部・体幹リラクゼーション)、3ヶ月間実施。測定項目;1. 嚥下グレード、2. バーサルインデックス(BI)、3. アルブミン値(ALB値)を用いた。
統計処理に、嚥下グレードはMann-Whitney’s U test、ALB値とBIは対応のあるT検定を用いた。
【結果】
嚥下グレード
1a群3.25→5# 2a群2.75→4.25#
1b群3.25→5# 2b群2→2.66#
1a+b群3.28→5 NS 2a+b群2.71→2.85 NS
BI
1a群1→8.66 NS 2a群1→2 NS
1b群3.5→26 NS 2b群1→4.33 NS
1a+b群2.42→18.57 NS 2a+b群1→1.57 NS
ALB値
1a群2.33→2.58* 2a群2.28→2.43 NS
1b群2.52→2.75 NS 2b群2.28→2.43 NS
1a+b群2.55→2.88* 2a+b群2.51→2.71 NS
平均値 *;p<0.05で有意差有り。NS;優位差無し。#;検定不能
【考察】
ALB値の1a+b群と1a 群での優位な上昇は直前RHの効果により身体機能向上・経口摂取量増加し、栄養状態の改善がみられた結果である。
BIと嚥下グレードは、実地医療の立場として改善傾向があった。直前RHが、ポジションの改善とリラクゼーションによる筋緊張と姿勢の改善に繋がったと思われた。1a+b群では栄養状態の改善に加え感染症でのむくみの改善も見られた。有効な結果が得られたため症例数を増やし、より効果的な摂食・嚥下RHを行う予定である。