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伊藤 智典, 角 優美, 永田 健太郎
セッションID: O1-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
この度,専門職組織の国際事業において,①グローバルスタンダー
ドに関する取り組みの目的と達成,②達成にむけた課題や障壁の
有無,③課題や障壁がある場合,それはどういうものか,④解決
方法を明らかとすること,⑤その結果,将来への組織運営にむけ
て関係者らで変化を起こすためのエビデンスの創出を目的とし,参
加型のアクションリサーチとしてまとめたので報告する.
【方法】
研究デザインは仮説生成とリフレクションを繰り返す,アクション
リサーチとした.事業執行に積極的な参加をしているインフォーマ
ントを2名指定し,上記目的に関する半構造化インタビューの後に,
コンテンツ分析を行った.インタビューの範囲は2023年5月1日か
ら2024年4月31日とした.
【倫理的配慮・説明と同意】
本研究は人を対象とする生命科学・医学系研究ではないが,倫理
的な配慮をおこない,またインフォーマントは自由意思による参加
について承諾を得た.
【結果】
本会のグローバルスタンダードに関する取り組みにおいて,情報収
集,国際比較とギャップ分析,情報公開,事業執行と課題の共有,
リフレクションや,協議しながら進めていくことが肝要であること
が示唆された.
【考察】
専門職組織は,特定の専門資格を有する組織であり,一定の職能
基準や規則,制度を設定し,会員がこれらの基準を維持するよう
にすることや,政策提言を行う集団を指す.組織は地方公共団体
レベル,国レベル,世界レベルに分かれることがあり,理学療法
士の分野において,それぞれ都道府県理学療法士会,日本理学
療法士協会,そしてWorld Physiotherapyが該当する.日本理
学療法士協会には国際事業課が組織されており,グローバルスタ
ンダードに関する情報収集や課題の抽出を行い政策提言に寄与し
ている.
アクションリサーチは,全体的にポジティブな成長を目指すことを
目的としており,プロセス全体を通じて循環的な方法で変化を生
み出し,測定する研究の一種と言われている.今回の研究において,
専門職組織のグローバルスタンダードに関する取り組みについての
達成にむけた課題と障壁,また将来的にポジティブな変化を起こ
しつづけるための仮説が生成された.しかしながら仮説生成型の
研究のため,一般化はできない.今後もリフレクションを継続的
に行い事業執行することが肝要といえる.
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白井 秀明, 那須 高志, 小林 渓紳, 久慈 祐輔, 菊地 竜平, 甲田 知有, 為川 瑞貴, 立川 智也
セッションID: O1-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折術後患者の歩行能力は頸部骨折と転子部骨折
で異なる印象をもつ.本研究は疾患名の違いにより,術後機能の
差を検討した.
【方法】
適格基準は大腿骨近位部骨折を呈し,当院にて手術を施行され
たものとした.受傷前は自宅住居かつ,独歩もしくはT字杖を使
用し平地歩行を自立していたものとした.除外基準は認知機能障
害,荷重制限が生じたものとした.評価項目は年齢,身長,体重,
Body Mass Index : BMI,診断名,骨折分類,術前の歩行能力
(Functional Ambulation Category : FAC),手術待機日数,
手術方法,出血量,手術時間,麻酔時間,併存疾患(Charlson
Comorbidity Index : CCI),CRP,Hb,術後7日目の荷重率と
荷重時痛,術後14日目における歩行自立の可否,下腿周径,握
力,認知機能(改訂長谷川式簡易知能評価スケール:HDS-R)とし
た.統計学的解析はフリーソフトウェアEZR Ver.1.55を使用した.
2群において連続データにおいてはt検定を,2値データに関しては
X2乗検定を用いた.なお危険率は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理委員会にて承認を受
けた.実施にあたり被験者に十分な説明と同意を得て行った.
【結果】
対象者は43例(頸部骨折28例,転子部骨折15例)であった.頸部
骨折群は転子部骨折群よりも手術待機日数,術前CRP,出血量,
術後1日Hbにおいて高値であった.
【考察】
手術待機日数は,当院では,転子部骨折は疼痛や合併症のリスク
から早期手術を推奨し,頸部骨折は症例によっては保存療法も検
討しており,説明を十分に行うため,差が生じたと考えた.出血量,
術後1日Hbにおいて頸部骨折群が高値を示した.人工骨頭置換術
は展開が大きいため出血量が多く,必要なものには輸血を実施す
る.一方,転子部骨折は創内出血が多いため術後からHbが低値
であったと考えた.次に術前CRPにおいて頸部骨折群が高値を示
した.転子部骨折群は手術待機日数が短く,CRP値のピーク前に
手術を施行し,また,頸部骨折では栄養動脈の障害が高率に発生
することから,術前CRPが高値であったと考えた.一方,荷重率
と歩行自立の可否には両群に差がみられないため,我々の先行研
究である荷重率を用いた歩行自立の予測が両群に適応できる可能
性も考えられた.
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DPCデータベースを用いた傾向スコア解析
五十嵐 達也, 加茂 智彦, 宮田 一弘, 田村 俊太郎, 小林 壮太, 海津 陽一, 齋藤 拓之, 久保 宏紀, 百崎 良
セッションID: O1-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
近年,診断群分類別包括評価(DPC)データを用いたフレイルリス
ク評価法が考案され,その有用性が報告されている.脳外傷患者
のフレイルリスクは日常生活活動(ADL)の予後に影響することが
報告されているが,水頭症患者のフレイルリスクとADLの予後との
関連は検証されていない.本研究では,傾向スコアマッチング法
(PSM)を用い,高齢水頭症患者のフレイルリスクが退院時のADL
に影響を及ぼすかを検証した.
【方法】
研究デザインは後方視的コホート研究とした.対象は2017年から
2022年にDPC対象施設に入院し,JMDCの施設データに登録さ
れた65歳以上の水頭症術後患者1538名とした.フレイルリスク
の指標であるHospital Frailty Risk Scoreにより,対象を低リス
ク群(<5点)と中高リスク群(≧5)の2群に分類した.傾向スコアは,
先行研究からADLの自立度への影響が予想された背景因子(年齢,
性別,Body Mass Index, 入院時のBarthel Index(BI)スコ
ア,入院施設のベッド数,入院時の意識障害の有無,入院年,入
院時の服薬数)から算出した.フレイルリスクで分類した2群間の
PSMはキャリパーを伴う最近傍マッチング法を用い,適合の許容
度を各変数の標準化平均差(SMD)を算出して確認した.PSM後,
対応のないt検定により退院時のBIスコアとBI効率(BI利得/在院
日数)をフレイルリスクで分類した2群間で比較した.有意水準は
5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は既存データベースの個人情報を含まないデータを用いて
おり,研究教育機関の倫理審査委員会で略式承認を得た.
【結果】
低リスク群1238名,中高リスク群300名に分類され,PSM後,
両群の対象は298名ずつであった.マッチング後のSMDはいず
れも0.1以下であり,PSMの適合は良好であった.群間比較の結
果,低リスク群/中高リスク群の退院時のBIスコア(点)は68.3
±34.0/60.9±34.1(p=0.009),BI効率( 点/日)は0.49/0.10
(p=0.034)で,いずれも中高リスク群で有意に低値であった.
【考察】
フレイルリスクは高齢水頭症患者の術後のADLの回復に影響する
ことが明らかとなった.今回用いたフレイルリスク評価は,日常診
療から得られたデータを用いて実施することが可能であり,電子
カルテに実装することで,フレイルリスクを早期から評価すること
が可能である.今後は,フレイルリスクの高い患者に対する術前
からの包括的介入や早期理学療法介入の有用性について検証する
必要がある.
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佐藤 海渡, 新木 健太
セッションID: O1-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
大腿骨近位部骨折(HF)術後患者において,歩行能力の予後を早
期に予測することは,退院先の検討や歩行の長期予後の予測に有
用である.本邦ガイドラインにおいても,術後歩行能力回復に影
響する因子について報告されている.近年,基本動作能力を評価
するcumulated ambulation score(CAS)と術後歩行能力の関
連が明らかになってきている.本研究の目的は,術後2週時の歩
行能力にどのような因子が関連しているかを明らかにすることであ
る.
【方法】
対象は2022年6月~ 2024年1月に当院でHFに対し手術を施行し
た患者のうち,65歳以上かつ受傷前に歩行が自立していた109例
とした.除外基準は術後免荷,多部位の外傷,内科疾患の合併,
術後在院日数2週以内の症例とした.調査項目は年齢,術後3日
間のCAS(3day CAS),簡易認知検査(AMTS),性別,骨折型,
受傷前歩行能力とした.対象を術後2週時の歩行能力により,杖
歩行獲得群,歩行器歩行獲得群,歩行未獲得群の3群に分類し単
変量解析を行なった.有意差を認めた項目を説明変数とし,術後
2週時の歩行能力を従属変数とした順序ロジスティック回帰分析を
行なった.統計ソフトはEZRを使用し,有意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言および当院の倫理規定に則り実施した.
また個人情報に十分配慮し,患者情報を診療記録から抽出した.
【結果】
HF術後2週時の歩行レベルは,杖歩行獲得群32例,歩行器歩行
獲得群51例,歩行未獲得群26例であった.群間比較では,3day
CAS(すべての群間),年齢(杖歩行獲得群VS歩行器歩行獲得群,
歩行未獲得群),AMTS(杖歩行獲得群,歩行器歩行獲得群VS歩
行未獲得群),骨折型(杖歩行獲得群VS歩行器歩行獲得群),受
傷前歩行能力(杖歩行獲得群VS歩行器歩行獲得群,歩行未獲得
群)で有意差を認めた.順序ロジスティック回帰分析では,3day
CAS(OR:2.00,95% CI:1.54-2.72,P<0.01),AMTS(OR:
1.48,95% CI:1.22-1.84,P<0.01)が抽出された.
【考察】
本研究では,HF術後2週時の杖歩行,歩行器歩行,歩行未獲得
を決定しうる因子として3day CAS,AMTSが有用であることが
示された.当院ではDPC入院期間Ⅱを適正な在院日数として定め,
多職種で退院支援を行っているため,早期に術後2週時の歩行能
力を予測できることはその一助となることが示唆される.
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小川 幸恵, 保地 真紀子, 中山 裕子
セッションID: O1-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
TKA後の大腿骨インプラント周囲骨折の頻度は,TKA症例の0.3
~ 5.5%と少ないが,治療に難渋するため重大な合併症とされて
いる.しかし歩行に関する報告は少ない.本研究の目的は,TKA
後インプラント周囲骨折症例の受傷前後の歩行自立度と運動機能
について明らかにすることとした.
【方法】
対象は2018.4 ~ 2024.3のTKA後大腿骨インプラント周囲骨折
症例(以下I-Fx群)21名(女性21名,86.8±8.8歳,TKAから骨折
までの期間11.3±6.8年),対照群を年齢・性別をマッチングさせ
た大腿骨骨折症例30名(女性30名,83.4±8.4歳)とした.大腿骨
近位部骨折は除外した.調査項目は,受傷前・退院時の歩行自立度,
退院時膝ROM,退院時疼痛の有無,健側のTKA手術歴,入院
期間,全荷重開始までの期間とし両群間で比較した.統計学的検討
はt検定,χ2検定を用い有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
当院の倫理規定に則り実施した.
【結果】
受傷前歩行は,I-Fx群;歩行18名86%(フリーハンド6名29%,杖
7名33%,歩行器自立3名14%,歩行器介助2名10%)車椅子3名
14%, 対照群;歩行24名80%(15名50%,4名13%,5名17%,
0名0%)車椅子6名20%であり有意差は見られなかった.退院時
は,I-Fx群; 歩行10名48%(0名0%,4名19%,5名24%,1名
5%)車椅子11名52%,対照群;歩行23名77%(0名0%,10名
33%,5名17%,8名27%)車椅子7名23%であり,I-Fx群は有意
に歩行能力が低く,車椅子の割合が高かった.退院時膝ROMは,
屈曲I -Fx群98.7±15. 6°,対照群120. 8±21. 3°,伸展‐5. 9±5. 4,‐6. 0
±8.7°で屈曲のみ有意差を認めた.健側のTKA手術歴があった割
合は,I-Fx群17名81%,対照群0名0%と有意差を認めた.退院
時疼痛があったのは,I-Fx群12名57%,対照群22名73%,入院
期間はI-Fx群83.1±37.6日,対照群72.1±29.9日,全荷重開始ま
での期間は43.5±19.0日,39.4±19.9日でありいずれも有意差は
見られなかった.
【考察】
I-Fx群の歩行能力は,対照群と比較し受傷前は差がないが退院時
は有意に低かった.これまでにTKA症例の筋力,バランス能力低
下が報告されており,受傷前歩行が自立していても潜在的な運動
機能の低下があったことが予想された.またI-Fx群の中で退院時
車椅子となった症例は,年齢が高く,膝伸展制限が有意に大きく,
歩行再獲得に影響していると考えられた.
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樋口 大輔, 贄田 高弘, 藤井 菖
セッションID: O2-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
腰部脊柱管狭窄症(LSS)の周術期の理学療法において痛み・しび
れは重要な帰結指標である.その痛みやしびれが退院後の予後と
も関連するかどうかについては不明である.そこで,本研究の目的
を,腰部脊柱管狭窄症患者における術後2週時の痛み・しびれが
術後1年時の健康関連QOL(HRQOL)および身体活動量(PA)と関
連するかどうか,関連しないとすればどんな指標が関連するかに
ついて明らかにすることとした.
【方法】
LSSに対する手術を受けた65歳以上の人のうち,少なくとも術後
21日まで入院していた人,術後1年時のHRQOLおよびPAの調査・
測定ができた人を対象とした.術後1年までにLSSあるいは別の疾
患の治療を新たに受けた人は除外した.術後2週時に①腰痛,下
肢痛・しびれのそれぞれの強度(NRS),②主観的な歩行とセルフ
ケアの自立度ならびに不安の程度,③痛みの破局化(PCS),④軽
度なPA(LPA)と中等度以上のPA(MVPA)を調査・測定した.術
後1年時には,HRQOL(SF-12)とMVPAを調査・測定した.PA
の測定には活動量計(HJA-750C)を用いた.術後1年時のSF-12
の下位項目およびMVPAと単相関関係にあった術後2週時の調査
項目と年齢・性別を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)
を行った.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に従った.本研究の実施に先立ち,研究
実施施設の倫理審査委員会の承認を得た.また,研究対象者に
は研究の概要を書面および口頭にて十分に説明し,研究参加の同
意を記名にて得た.
【結果】
48人(73.0±4.7歳,男性25人[52.1%])が研究対象となった.
SF-12の下位項目およびMVPAのいずれとも腰痛,下肢痛・しび
れのNRSは有意な関連を示さなかった.SF-12の下位項目と有意
な関連を示した指標は,セルフケア(身体機能,日常役割機能(身
体),体の痛み,社会生活機能,日常役割機能(精神)),不安(活
力,社会生活機能,メンタルヘルス),PCS(日常役割機能(身体),
体の痛み,全体的健康感,日常役割機能(精神))の3つであった.
MVPAと有意な関連を示した指標はLPAと年齢であった.
【考察】
痛み・しびれの程度は周術期における重要な帰結指標ではあるも
のの,退院後の生活を見越した術後理学療法を計画するための指
標にはならないことが示唆された.セルフケアの自立度や心理状
態,痛みの破局化,院内での活動性の観点から多面的に心身を
評価する必要性があるだろう.
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吉川 咲子, 長 正則, 北野 牧子
セッションID: O2-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
非定型大腿骨骨折(AFF)に関する報告は増加してきたが,理学療
法領域における報告は少ない.今回,AFF患者に対し観血的骨折
整復固定術(髄内釘)を施行した症例の理学療法を実施し改善が得
られたので報告する.
【症例紹介・評価・リーズニング】
80代女性.受傷前は独歩,ADL自立,主婦業自立.落ち葉を掃
除中に滑って転倒し受傷.同日受診し,XP・CTにて左大腿骨骨
幹部骨折(AO分類:A-3)を認め,受傷4日後に観血的骨折整復固
定術を施行した.術中の固定性は良好であり,翌日より運動療法
および疼痛に応じ荷重開始となった.
既往歴に骨粗鬆症があり,7年前よりビスホスホネート製剤を内
服していた.入院時のYAM値は70%.AFFは両側性の症例や疲
労骨折に類似するなどの報告がある.本症例は,受傷する半年前
より歩行時の両大腿部前面痛の前駆症状があった.入院時のXP・
CTにて,右大腿骨中央の骨皮質の肥厚および大腿骨の軽度外弯
を認めた.術後の過度なストレスは骨折発症リスクと考え,対側
下肢の過負荷を防止し理学療法を実施していくこととした.
【説明と同意】
本症例に対し,発表の主旨を十分に説明し同意を得た.
【介入内容と結果】
運動療法開始時は患側臀部~大腿部の著明な腫脹と熱感および
運動時痛を認めた.自動での股・膝関節屈曲伸展は困難であった.
起立・移乗時の対側下肢への負荷が懸念されたため,特に移乗
の際の方向転換時に対側下肢へ勢いよく荷重しないよう練習や指
導を実施した.術後6日目より患側下肢の腫脹・疼痛軽減を認め,
平行棒内より歩行練習を開始.疼痛や歩容を確認しながら歩行補
助具を変更し,自宅退院に向け歩行・ADL練習をすすめた.対側
大腿部の疼痛が出現することなく,術後19日目にT字杖を使用し
自宅退院となった.
【考察】
AFFは軽微な外力によって大腿骨小転子遠位部直下から顆上部直
上までに生じる骨折であり,両側性の報告もある.術後は解熱鎮
痛剤を内服している事もあり対側大腿部痛の訴えはなかったが,
注意深く理学療法を進めた.患側下肢に配慮するだけでなく,対
側下肢の疼痛や過剰な荷重ストレスを考慮しながら理学療法を実
施したことで,安全に動作・歩行を獲得することができた.
AFFの危険因子は多岐にわたるが,荷重や歩容がどの程度関連す
るかは明らかになっていない.安全に理学療法を実施するために
も,今後も症例を重ね検討をしていく必要があると考える.
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居山 圭介, 冨田 藍, 木幡 茉季, 野田 笑美, 星 典行, 廣島 拓也
セッションID: O2-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
不全頚髄損傷者は,上肢の運動麻痺や関節拘縮により下肢装具
の着脱が困難となることが多い.今回両側短下肢装具を必要とし
ている不全四肢麻痺患者に対し,カフバンドの工夫を行うことで,
装具の着脱から移乗までが自立した.そこで,ダブルクレンザック
足継手付き両側金属支柱型短下肢装具(以下,従来型装具)と今
回製作した装具の比較と,装具装着の正確さを評価した.
【症例紹介,評価,リーズニング】
症例は第4頚髄損傷による不全四肢麻痺を呈した60歳台男性.
ASIA impairment scaleはD, 改良フランケルの分類はD1,
Walking lndex for Spinal Cord Injury IIは6である.身体機能
は,手指の麻痺と拘縮が著明で,把持動作が困難であった.着脱
の正確さの評価は,患者とセラピストが装具を着脱した時間を測定
した.満足度の評価は,System Usability Scale(以下,SUS)
を計測した.正確な装着の指標は,装具内踵部の前方へのズレに
より生じる隙間の長さ(以下,踵部隙間)を測定した.
【倫理的配慮,説明と同意】
症例に発表について十分に説明し,自由意思に基づき文章で同意
を得た.
【介入内容と結果】
今回装具の作製は,シングルクレンザック足継手付き両側金属支
柱型短下肢装具を使用した.装具着脱時にカフバンドを角カンに
通し固定する方法ではなく,モールド下腿部分にバンドを固定す
る面ファスナーのフック面をカシメにて固定した.またカフバンド
の取り付け操作を容易にするためカフバンドへ指を通すためのルー
プを取り付けた.装具の着脱時間は,従来型装具では装着不能,
今回製作した装具(以下,バンド重ね式装具)では装着3分31秒,
取り外し1分1秒.SUSは従来型装具で22.5点,バンド重ね式装具
で82. 5点.踵部隙間は,自身での装着で右1.5cm左1.0cmセラ
ピストによる装着で左右ともに1.0cmの隙間が生じた.
【考察】
佐藤らは,脳血管疾患患者の調査にて義肢装具士や理学療法士
は,歩行や立位の安定性を向上させることを短下肢装具使用の目
的にしている.一方で装具使用者は,自己装着の可否など短下肢
装具の活用しやすさが重視されると報告している.このことから,
装具の着脱が可能となったことがSUSで高い結果を示す要因と
なったと考えられる.また,踵部隙間において,軽度のずれは生
じていたが,移乗動作においての介助量は変わらなかった.その
ため本症例において,バンド重ね式装具を使用することは利用者
とセラピスト双方の目的に適った装具選定・工夫が行えたと考えら
れる.
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有限要素解析を用いた応力解析
堀内 健太, 王 森, 島村 雅彦, 小栢 進也
セッションID: O2-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
変形性膝関節症の進行要因として関節間力増加が挙げられる.
Toe out歩行(以下:T歩行)は関節間力の減少が報告されている.
しかし,先行研究では関節の一点に加わる力しか評価できておら
ず,かつ半月板の荷重分散機能を考慮していない.関節ストレス
の検討には,関節面に生じる圧分布を調べる必要がある.そこで,
本研究は膝関節軟骨に生じる垂直力及び剪断力を有限要素法に
よって算出し,T歩行でストレスが減少するかを調査した.
【方法】
健常成人女性3名(年齢21.6±0.47歳)を対象に足部をまっすぐに
向けたStraight歩行(S歩行)と足部を20°外側に向けた(T歩行)の
歩行計測を行った.Plug-in-Gait法に基づいて被験者体表に反射
マーカー貼り付け,床反力計(Kistler社製),三次元動作解析装置
(VICON Nexus 2.10.2)を用いて動作を計測した.筋骨格モデル
解析により関節角度と関節モーメントから各筋の張力を算出した.
次に,FEbio studioを用いて有限要素解析を行い,脛骨大腿関
節内側部の脛骨軟骨に加わる圧分布を計算した.膝関節モデルは
軟骨,半月板,靭帯,筋で構成され,骨は剛体三角形要素,軟骨
と半月板は弾性六角形要素を用いた.立脚期に軟骨に生じる最大
垂直力と剪断力を算出し,S歩行及びT歩行での違いを調査した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属機関の研究倫理委員会の承認後に実施した.対象
者には研究内容を説明し,同意を得た.
【結果】
3名の被験者の垂直力はS歩行でそれぞれ4.08,4.33,5.24MPa,
T歩行で5.42,4.78,5.47MPaであり,T歩行で増加した.剪
断力はS歩行でそれぞれ1.68 ,1.90,1.69MPa,T歩行で
1.85,1.76,1.70MPaとなり,剪断力もT歩行で増加傾向にあっ
た.またS歩行において最大垂直力は3名で,最大剪断力は2名で
Terminal Stance(以下;TSt)の区間で生じており,T歩行でも
最大垂直力は3名,最大剪断力は2名TStで生じていた.脛骨内側
部の軟骨の接触位置はS歩行で立脚期全体を通して軟骨中央部に
集中していたが,T歩行では立脚後期では内側下方にも広がってい
た.
【考察】
T歩行で垂直力及び剪断力が増加した.これまでメカニカルストレ
ス減少に有効と考えられてきたT歩行は,逆に力学的ストレスを増
大させる結果であった.またS歩行及びT歩行ともにTStで最大垂
直力及び剪断力が生じる傾向にあり,この区間での力学的ストレス
の分散について,さらに詳細に調査する必要性が示唆された.
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解良 武士, 小野沢 浩, 齊田 高介, 樋口 大輔, 篠原 智行, 河合 恒, 大渕 修一
セッションID: O2-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
サルコペニアを有する高齢者は立ち上がり動作時の最大床反力(F)
が低値である.以前,我々は立ち上がり動作時の床反力を利用し
たサルコペニア判定式を開発した.本研究の目的は,開発したサ
ルコペニア判定式を用いたサルコペニア判定の妥当性を検証する
ことである.
【方法】
大規模デイケア施設の利用者105名を本研究の対象者とした.対
象者には基本属性の他,サルコペニア判定のために骨格筋量,
握力,歩行速度を測定した.立ち上がり時の床反力はzaRitz
(TANITA)を用いた.対象者には椅子からできるだけ素早く立
ち上がるように指示し,立ち上がり時の床反力の波形データを
サンプリング周波数80Hzで記録した.これをLabChart Ver.8
(ADInstruments)に取り込み,立ち上がり動作時のFを算出し
た.我々が開発したF,年齢,性を用いたサルコペニア判定式でス
コアーを求め,既知のカットオフ値を用いてサルコペニアを判定し,
ROC曲線によって妥当性を評価した.さらに妥当性を裏付けるた
めに,サルコペニア判定のカットオフ値を用いた低骨格筋量,低
握力,低歩行速度についてもROC曲線による評価を行った.
【説明と同意】
対象者には,研究の目的,方法,研究への参加と拒否の自由,個
人情報の扱い,利害や利益の可能性,結果の公表について十分に
説明し,書面による同意を得た.本研究は研究倫理審査委員会の
承認を経て実施された(承認番号第1981号).
【結果】
我々が開発したサルコペニア判定式では,サルコペニアに対する
感度が88.2%(95%CI; 76.1- 95.6%),特異度は42.6%(955CI;
29.2-56.8%), AUCは0.753(95% CI; 0.660-0.847)で,以前
の開発での評価に比べると特異度とAUCが低かった.サルコペニ
アを判定するための低骨格筋量,低握力,低歩行速度のカットオ
フ値未満に対する評価では,骨格筋量のAUCが0.839(95%CI;
0.757-0.921)と高値であったが, 歩行速度のAUCは0.651
(95%CI; 0.541-0.761)と低かった.
【考察】
一般的に開発データセットに比べると検証データセットではAUC
が低くなることから,今回の結果は予測の範囲である.それでも
我々が提案したサルコペニア判定式とそのカットオフ値は,握力・
歩行・骨格筋量で定義したサルコペニアに対する感度が高く,ス
クリーニングとしての性能は十分である.一方で特異度は低いが,
低握力または低歩行速度の判定を加味することでより精度を高め
ることができる可能性がある.
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渡邊 真衣
セッションID: O3-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
本症例は末期肝硬変と筋挫傷を併存した重複障害患者であり,リ
ハビリテーション(以下:リハ)のリスク管理に難渋した.予後が良
好な肝硬変患者では,中強度から高強度の運動が推奨され,リス
ク管理が重要であると報告されている.しかし,末期肝硬変患者
に対するリハについてはまだ明らかにされていない.加えて,重複
障害に対するリハも重要度を増している.そこで,末期肝硬変患
者に対する介入について,経過と考察を踏まえて報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
本症例は自立していた60代後半男性で,Child-Pughスコアは
12Cのアルコール性肝硬変患者である.柔軟運動により左内転筋
筋挫傷し,左大腿皮下血腫を呈した.翌日に貧血が進行し,他
院にて入院加療を行った.その後,アルコール性肝硬変の治療も
含めて当院転院となり,発症後77日から当院でのリハ開始となっ
た.発症77日の血液データは,ALB 2.6g/,血中アンモニア86
μg/であった.また,左膝関節屈曲可動域30°と制限が著明で,
Barthel Index(以下:BI)45点であった.安静指示により左膝関
節の可動域制限が出現し,ADLが低下していた.前述した結果よ
り,左膝関節可動域制限と筋力低下,体力低下,ADL能力低下を
問題点とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則り,口頭にて同意を得た.
【介入内容と結果】
運動療法は40分の介入を週6回,修正ボルグスケール2 ~ 4程度
となるように負荷量を設定し,可動域練習・筋力増強練習・歩行
練習を行った.運動中の脈拍は110bpm,運動後は収縮期血圧
が20mmHg程度上昇した.受傷後137日,左膝関節屈曲可動域
が25°拡大し,BIが65点に改善した.しかし,血中アンモニアは
86μg/から121μg/と上昇し,日中の活気や低下がみられ,肝性
脳症の徴候も出現していた.
【考察】
肝性脳症の悪化について,高負荷のトレーニングが要因の一つとし
て報告されている.先行研究では肝硬変患者への運動は6METs
以下とされており,本症例でも2.8METs程度の負荷量であった.
目標心拍数から考えると,本症例は最大心拍数の60%の負荷に
設定していた.肝硬変の進行は心機能の低下を伴うとされている
ことを考慮すると,循環応答として高負荷であった可能性がある.
そのため,心機能の評価も行い運動強度を設定することが重要で
あった.
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佐々木 哲也, 岡﨑 陽海斗, 大坂 祐樹, 古谷 英孝, 星野 雅洋
セッションID: O3-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
頚椎症性脊髄症(CSM)患者に対する手術療法はバランス能力を
改善させる.しかし,術後に躓きやふらつき等のバランス障害が残
存する症例を多く経験する.バランス障害に対して,近年多方向ト
レッドミルトレーニング(MDTT)の効果が散見され,日常動作に
おける後方や側方へのステップ動作において有効性が示されてい
る.今回,CSM術後患者に対しMDTTを実施し,バランス能力
の改善を認めたため報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
本症例は,CSMに対して椎弓形成術を施行された70歳代男性で
ある.術後1ヶ月で回復期に入棟し,病棟内ADLはシルバーカー
自立であった.BBSは49点であったが,ふらつきと小刻み歩行を
呈し TUGが13.9秒と転倒のカットオフ値を上回っていた.評価結
果から,動的バランス能力の改善が必要であると考えた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例検討は,ヘルシンキ宣言に基づき事前に十分な説明を行い,
同意を得た上で実施した.
【介入内容と結果】
介入デザインはAB法とした.A期は通常理学療法を実施し,B期
はA期に加えMDTTを毎日1週間実施した.MDTTは,トレッドミ
ル上を前後左右4方向に歩行する.歩行速度は快適速度とし,前
後方向各3分30秒間,左右方向各2分30秒間行った.評価時期は,
介入前(A’ ),A期終了時(A),B期終了期(B)とした.評価項目は,
TUG,BBS,10m歩行,3m後方歩行,ロンブステスト(RBT)と
した.RBTは前後左右のステップ長を繋ぎ面積を算出し変数とし
た.TUG,10m歩行は臨床的最小重要効果変化量(MCID),3m
後方歩行は最小可検変化量(MDC),BBSとRBTは記述的統計量
を用いて効果判定を行った.
結果,TUG[秒](A’ →A→B)(13. 9→13. 2→11. 5),3m後方歩行[秒]
(8.23→8.0→5.31),10m歩行[m/s](0.91→0.97→1.07)はB期
にMCID,MDCを上回る改善を認めた.BBS[点](49→50→55)
は,各期で改善し.RBT[cm2](750→900→4000)はB期で改
善した.
【考察】
本症例に対してMDTTを行うことでバランス能力が改善した.
MDTTは多方向へのステップ能力が改善するため,前方に加え後
方や左右への重心移動を必要とするTUGやRBTで改善が得られた
と考える.また,トレッドミルによる規則的な歩行パターン練習に
より,ストライド長が改善して歩行速度が向上したと考える.今回
の結果は,短期間であったが,MDTTがCSM術後患者のバランス
能力の改善に有効であることが示された.
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塙 恵太, 横谷 浩士, 三浦 秀之, 染谷 真琴, 平野 いづみ, 境 優希, 遠藤 響, 持田 英俊, 鈴木 陽一
セッションID: O3-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
急性期病院の理学療法士は,脳卒中発症後早期から効率的な機
能回復を促す理学療法を実施すると同時に,自宅退院の可否や回
復期病院転院の適応など理学療法介入早期の段階で予測する必
要があるといわれている.
先行研究においては初回介入時のNational Institutes of Health
Stroke Scale(以下:NIHSS)で転帰を予測するという報告が散見
されているが,そのカットオフ値の点数にはばらつきがみられている.
そこで本研究では,当院の脳卒中患者を対象に自宅退院を予測す
る為の,リハビリ初回介入時NIHSS(以下:リハ初回NIHSS)のカッ
トオフ値を検討し円滑な退院支援の一助とすることを目的とした.
【方法】
対象は2020年9月~ 2020年10月まで当院に入院した脳卒中(く
も膜下出血を除く)患者でリハ初回NIHSSを評価できた79名.そ
のうち自宅退院した患者(以下:自宅退院群)35名とそれ以外
の患者(以下:対照群)44名の2群に分けて,患者背景を比較す
る.連続変数には対応のないt検定およびマンホイットニーのU検
定,カテゴリー変数にはFisherの正確確率検定検定を行う.また
Receiver Operatorating Characteristic curve (以下:ROC
曲線)を用いて感度および特異度から,転帰に対するリハ初回
NIHSSのカットオフ値を算出する.特に断りのない限り,検定時
の有意水準は両側5%とする.
【倫理的配慮】
当院の倫理審査委員会で承認を得た(承認番号:2024052118).
【結果】
対象者の年齢は76.34±10.54歳,男性54.5%(42名),入院期間は
20.34±13.8日,リハ初回NIHSSの得点は8.36±10.21点であった.
また自宅退院群と対照群を比較すると,年齢(75.0±11.5 vs 77.5
±9.6),性別(男性:54.3% vs 54.8%),入院からリハビリ開始
日までの日数(1.9±2.9 vs 1.9±1.1)には有意差がなく,リハ初回
NIHSS(1.71±2.8 vs 13.9±10.8),入院日数(10.6±6.5 vs 28.5
±13.0)で有意差を認めた.
ROC曲線解析の結果,自宅退院の可否に対するリハ初回NIHSS
のカットオフ値は3点でありAUC:0.935,感度:88.1%,特異度
88.6%であった.
【考察】
ROC曲線解析によって自宅退院の可否を予測するリハ初回NIHSS
のカットオフ値を算出した結果 は3点であった.先行研究と同様
に当院でもリハ初回NIHSSを用いて早期に自宅退院が可能か予測
でき,急性期病院として円滑な退院支援の一助になると示唆され
た.
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-当法人の介護支援専門員を対象とした横断研究-
川村 哲史, 清水 雄太
セッションID: O3-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
下肢装具使用者にとって,装具が生活を支える一部でありフォロー
アップが重要である.しかし,装具難民というワードがあるように
問題を抱えている方が多いことが推察される.大西らによると,リ
ハビリテーションスタッフ,義肢装具士(以下PO)の次に介護支援
専門員(以下CM)が装具の対応を行っていることを報告している.
今回 CMに焦点を当て,当法人がサポートしている地域における
下肢装具連携の現状を調査し課題を考察することを目的とした.
【方法】
当法人のケアプランセンターと地域包括支援センター計7事業所の
CM38名を対象にアンケート調査を実施した.A基本属性,B下
肢装具に関して困っていること,C連携経験の有無,D困った際の
相談先,E地域連携に関する要望の全5項目より構成しB,D,E
は複数回答型とした.さらに,ケアプランセンター所属CMとE地
域連携に関する要望をクロス集計し比較した.解析はカイ二乗検
定とボンフェローニ法(有意水準は5%)で行った.
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケート調査は匿名とし,当院倫理委員会の承認を得て実施し
た.
【結果】
有効回答34名.A基本属性の前職は介護福祉士(59%),看護師
(12%),その他(29%)であった.B下肢装具に関して困っている
ことは問い合わせ先(38%),破損チェック(30%),装具が適切か
(53%),耐用年数(32%)であった.C下肢装具に関して連携経験
のあるCMは67%であった.D相談先の内訳は,医療機関の療法
士(32%),生活期療法士(59%),PO(15%),市役所(41%)と
POのみ20%を下回った.E他職種連携における要望に関しては,
ケアプランセンター所属CMでは相談窓口(87%)が他の回答と比
較して有意に多かった(P値0.025).
【考察】
CMは装具が適切かを含め下肢装具フォローアップ全般的に困って
いた.要因としては,CMの前職が介護福祉士や看護師が主であ
り装具の専門性が乏しいことが挙げられる.そのため,CMに対し
て下肢装具の基本的知識の啓発や連携を行う必要性があると考え
る.下肢装具使用者や適応者が生活をおくるためには,下肢装具
の明確な相談窓口があることが望ましい.一定の相談先はあった
ものの,下肢装具に直接関わりのあるPOによる連携や定期メンテ
ナンスが少ないのが現状である.一例として,東京都立川市近隣
では装具外来がないため,装具外来をつくり窓口を増やす意義が
あると考える.
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-実習レポートの計量テキスト分析から-
安齋 紗保理, 大杉 紘徳, 原田 恭宏, 竹内 弥彦, 大西 忠輔, 深谷 泰山, 烏野 大
セッションID: O3-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
理学療法士養成校において,通所リハビリテーション又は訪問リ
ハビリテーションに関する実習(以下,地域実習)が必須化された.
理学療法学教育モデル・コア・カリキュラムにおける地域実習の目
標は「地域理学療法の場面での経験を通して,地域包括ケアシス
テムにおける理学療法士の役割を理解し,地域包括ケアシステム
に関与する関連専門職の役割を理解すること」であり,学生が得
る経験が他の臨床実習と異なると考えられる.そこで本研究では,
学生の実習後のレポート内容を分析し,地域実習における学修成
果を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は,理学療法士作業療法士学校養成指定規則改正の適応後
に入学し,地域実習まで終えた61名とし,1 ~ 4年次の各臨床実
習の終了時に課したレポートを分析データとした.レポートのテー
マは全ての実習で共通しており,「臨床実習で経験した理学療法士
の業務・周辺業務について(以下,PT業務)」,「自分の目指す理学
療法士像(以下,目指すPT像)」であった.分析はKH Coder 3を
用い,地域実習におけるPT業務のレポートについて階層的クラス
ター分析を実施した.また,目指すPT像のレポートについて実習
種類(見学,検査測定,評価,総合,地域)を外部変数とした対応
分析を実施し,地域実習に特徴的な出現語を検討した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理審査委員会にて承
認を受けた(2023-008).
【結果】
学生は地域実習におけるPT業務として,「情報共有」「関連職種や家
族との連携」「身体機能の維持向上」「集団体操」「生活環境の整備」
「訪問リハビリ」「介助方法の指導」「通所リハビリにおけるトレーニ
ング」「バイタル確認や送迎などの周辺業務」を経験していた.また,
目指すPT像に関する分析において,対応分析の結果,地域実習で
は「地域」「生活」「環境」「向上」「社会」「自宅」などが特徴的な出現語
として示された.
【考察】
学生は,地域実習において集団体操や訪問リハビリ,関連職種と
の連携などの地域理学療法に欠かせない業務を経験していた.理
学療法のプロセスや実践を学ぶことを目標とするその他の臨床実
習と異なる体験をできていたと考えられる.また,それらの経験
をすることで,在宅生活を送る対象者の支援について学修できた
と考えられた.
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笛木 双葉, 岡本 海, 鵜澤 寛伸, 櫻井 陽子, 竹内 真太, 西田 裕介
セッションID: O4-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する運動療法は機能的能力を
維持・向上し,QOLを向上させるとされているが,その効果には異
なる結果が生じている.その理由としてALS患者の多種多様な症
状や進行度によって生じる個人差が影響している可能性がある.本
研究ではメタアナリシスを用いて,①ALS患者に対する運動療法は
効果があるのか,②その効果は特定の指標のベースラインの値に
影響されるのかの2点について明らかにすることを目的とした.
【方法】
本研究はALS患者を対象とし,介入条件は筋力訓練,有酸素
運動,その他の運動とした.検索式は「Amyotrophic lateral
sclerosis」「exercise」とし,検索式に取り入れた.機能的能力
(ALSFRS-R,ALSFRS,FIM),呼吸機能(%FVC),上下肢筋力
(MMT,MVIC)を主要アウトカムとしメタアナリシスを実施した.
異質性が認められた場合ALSFRS-R,%FVC,筋力,罹病期間,
年齢,BMI,疲労重症度スケール(FSS),球麻痺スコアのベース
ライン値を収集し,メタ回帰を実施した.またCochrane risk of
bias toolを用いて研究の質を評価した.
【倫理的配慮】
人を対象とした倫理的配慮は生じない.
【結果】
システマティックレビューの結果,8本の論文を取り込み,360人
のALS患者がこのレビューに含まれた.バイアス評価の結果,5本
がHigh riskであった.メタアナリシスの結果,介入群は対照群と
比較し機能的尺度(ALSFRS-R,ALSFRS,FIM)と呼吸機能(%
FVC)において介入前後の変化量が少なく,統計的有意差が認め
られた.機能的尺度において,各指標のベースラインの値からメ
タ回帰を実施した.その結果BMIとFSSが運動療法の効果に影響
を与えることが認められた.
【考察】
本研究より,ALS患者に運動療法を行うことで,機能的尺度と呼
吸機能の低下が抑制されることが示唆された.運動療法は早期
ALS患者の筋力,機能的能力,呼吸機能を高めることが示されて
おり,運動療法によって残存している神経筋機能に影響を及ぼし
たと考える.メタ回帰の結果,ベースライン時にFSSが低く,BMI
が高い患者で運動療法の効果がより得られることが示唆された.
疲労は機能的尺度,筋力の低下と相関し,疲労が高いほど低下す
るとされている.BMIでは,初期段階で低下すると生存期間が短
くなるとされている.以上のことからFSSが低く,BMIが高いALS
患者は進行が軽度または緩やかであり運動療法の効果が得られや
すいと考えられた.
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~足関節底屈筋のearly-RFDに着目して~
加藤 美乃, 後藤 光基
セッションID: O4-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
臨床にて,下肢疾患患者は,局所の疼痛軽減後も歩行時のふらつ
きを訴える患者が多い.近年,姿勢制御に関して筋力発揮率(以下,
RFD)が注目され,力発揮開始から100msまでのearly-RFD(以下,
e-RFD)は神経的要因を反映すると報告されている.加藤らは足関
節底屈筋のe-RFDが動的姿勢制御において重要と述べ,高速度の
収縮運動がe-RFDを向上させると報告している.高速度の運動は
フィードフォワード制御(以下,FF制御)との関連が報告され,大須
は速くて柔軟な運動を制御するにはFF制御が必要であると報告し
ている.そのためFF制御の要素を含む高速度の収縮運動は,より
足関節底屈筋のe-RFD向上に寄与するのではないかと考えた.そ
こで本研究の目的は,収縮運動の拍子を一定とランダムで実施した
際の足関節底屈筋e-RFDへの影響を明らかにすることとした.
【方法】
対象は足関節疾患の既往がない健常成人14名(26.5±2.3歳)とし
た.測定機器は徒手筋力計mobie(酒井医療社製)と表面筋電図
計(Noraxon社製Ultium)を用いてe-RFDを測定した.測定項目
は足関節底屈筋のe-RFDとし,運動課題の前後に計測した.測定
肢位は膝,股関節90°屈曲位,足関節底背屈中間位とし,10㎝台
に踵を乗せた肢位とした.運動課題は立位両脚カーフレイズとし,
メトロノーム音に合わせて行う群(以下,一定群)とランダムな音に
合わせて行う群(以下,ランダム群)の2群に分けて実施した.本研
究は最大筋力の2.5%をonsetとし,50msの値からonsetの値を
引き,時間で除したものをe-RFDとした.統計学的検討について,
一定群とランダム群のe-RFD値の前後比較はそれぞれ対応のあるt
検定を用い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の趣旨を十分に説明し同
意を得た上で行った.
【結果】
一定群は介入前0.43±0.15(N/s/kg),介入後0.52±0.10(N/s/
kg)であり,有意差を認めなかった.ランダム群は介入前0.53±0.19
(N/s/kg),介入後0.67±0.25(N/s/kg)であり,有意差を認めた.
(p<0.05)
【考察】
本研究にてランダム群で有意差を認め,収縮運動の拍子の違いが
足関節底屈筋のe-RFD向上に寄与したことが示唆された.先行
研究より,目的動作を遂行するために事前に筋緊張を調節し姿勢
を構えることはFF制御によるものと報告されている.今回ランダ
ム群では,突発的な音に反応して運動するよう指示しており,FF
制御の要素が強まったことで高速度の収縮運動が行いやすくなり,
e-RFDが向上したと考える.
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川口 玲来, 鈴木 裕太
セッションID: O4-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
近年,筋機能の質的評価として筋活動電位の変化率を平均勾配で
示した筋活動上昇率(Rate of electromyography rise;RER)
が注目されている.先行研究では大腿四頭筋のRERについて,膝
関節伸展運動に股関節内転運動を加えた研究が多く報告されてい
る.一方で,運動開始時の股関節肢位による大腿四頭筋のRERの
違いを調べた研究は散見されなかった.また内側広筋は,股関節
外転位にて高い筋出力を示す可能性があるが,RERについても同
様であるかは明らかにされていない.そこで本研究の目的は,運
動開始時の股関節肢位による大腿四頭筋のRERの違いを明らかに
することとした.
【方法】
対象は膝関節に整形外科的疾患の既往がない健常成人14名とし
た.運動条件は股関節肢位を中間位・外転位・内転位の3条件とし,
内外転の角度は各10°とした.測定肢位は端座位で,両上肢を後
方に手を付き,膝関節90°屈曲位で足底は床に接地しないように
し,最速かつ最大の力で膝伸展自動運動を5秒間行った.外側広
筋(VL)・大腿直筋(RF)・内側広筋(VM)の筋活動を,Noraxon
社製のULTIUMを用いて測定した.最大筋力の2.5%をon setと
し,on setから50ms後までのRERを算出した.また,計測は3
回行い,RERの平均値を算出し,解析に用いた.各条件の計測は
期間を空けて実施した.統計学的検討は各肢位のRERに対して反
復測定分散分析を行い,事後検定としてShaffer法を用いた.統
計解析はRコマンダーを使用し,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は対象者に研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た上で
行った.
【結果】
RERの平均値は,VLでは中間位327.4(μV/ms),外転位319.4(μ
V/ms),内転位281.5(μV/ms)であり,有意差はみられなかった.
RFでは中間位221.7(μV/ms),外転位205.6(μV/ms),内転位
193.0(μV/ms)であり,有意差はみられなかった.VMでは中間
位318.5(μV/ms),外転位377.1(μV/ms),内転位252.2(μV/
ms)であり,股関節中間位・内転位に対して,外転位で有意に増
大した(p<0. 05).
【考察】
VMの斜走線維は広筋内転筋腱板を介して大内転筋腱より起始し,
股関節外転位では大内転筋腱性部が伸張されることで緊張が増大
し,大内転筋とVMの共同収縮が生じたため,RERが増加したと
予測される.本研究の結果から,VMの膝関節自動伸展運動につ
いて,股関節外転位で行うことで,より効率的な筋力改善トレー
ニングになる可能性があると考えられる.
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山崎 大聖, 河野 健一, 石井 秀明, 吉原 楓, 井口 紗弥加, 川野 遥, 黒田 紋加, 中島 菜月, 角田 亘, 西田 裕介
セッションID: O4-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
生体インピーダンス法にて算出される位相角(Phase angle:
PhA)は,reactance/resistance比で算出され,細胞膜の生理
的機能や体細胞量を反映して低栄養で低下する.がん患者におい
て体重減少や生化学データより強い予後予測因子とされ,乳がん
患者に対するレジスタンス運動が,細胞内タンパク質の同化,細
胞膜構造の強化等によりPhAを改善させることもわかっている.
乳がん患者に使用する抗がん剤であるDocetaxelは副作用として
食欲不振,全身倦怠感,浮腫を伴い低栄養状態を惹起すること
からPhAが低下すると推察される.そこで本研究は,Docetaxel
投与とPhAの関連を観察する点を新規性とし,化学療法による骨
格筋を含めた細胞膜損傷に対するレジスタンス運動の適応を検証
するために,Docetaxel投与が及ぼす細胞膜機能低下の機序を
PhAから明らかにすることを目的とする.
【方法】
対象は当院にて乳がんに対して手術を施行した患者44例とし,
Docetaxel投与群(D群),Docetaxel非投与群(C群)に群分けを
行った.測定項目は,年齢,身長,身体組成とし,身体組成は
Inbody770(Inbody社)にて,体重,Body Mass Index(BMI),
骨格筋指数(Skeletal Muscle mass Index:SMI),PhA,細
胞外水分比(Extracellular Water/Total Body Water:ECW/
TBW)を測定した.統計学的分析はD群とC群の各指標の比較に
対応のないt検定を用いた.有意水準は全て5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理委員会にて承認を受
けた.また,対象者には書面と口頭にて説明を行い,同意を得た
上で実施した(承認番号:22-Ig-233).
【結果】
44例中,D群は10例,C群は34例であった.D群とC群の2群間
の比較において,年齢,身長,体重,BMI,SMI,ECW/TBW
は有意差が認められなかった.PhAにおいて,D群(3.9±0.6°)は
C群(4.6±0.6°)に比べ有意に低い値を示した(p<0.05).
【考察】
D群はPhAが有意に低下していた.Docetaxelはオクタノール
/水分配比が高く,細胞膜のリン脂質二重層に蓄積しやすい.
Docetaxel蓄積はアポトーシスや活性酸素による細胞の酸化的損
傷を誘引する.加えて,細胞質が受ける酸化ストレスは,細胞膜
脂質や膜タンパク質密度を低下させreactanceが減少することに
よって位相角が低下したと考えられる.本研究の成果としてレジス
タンス運動等がDocetaxel投与患者に対するPhA低下予防対策と
なり得る新たな知見を得た.
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田尻 遊, 佐藤 広大, 小野 文也, 増本 裕卓, 岡 知紀, 塩田 浩平, 後藤 義治, 山本 一輝, 大森 章一, 寺門 淳
セッションID: O4-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
凍結肩は退行性変化を基盤に発症し,関節可動域制限を主症状と
して日常生活動作やQuality of life(QOL)低下に影響する疾患で
ある.臨床において,肩関節内転制限(内転制限)により下垂位保
持が困難になり可動域改善に期間を要する症例を多く経験する.
我々は過去に内転制限は凍結肩患者の40%に発生し,内転制限に
より肩関節屈曲・外旋角度が低下すると報告した.近年,患者主
体の医療の重要性が提唱され,患者立脚型の評価法が用いられて
おり,肩関節疾患においてはShoulder36(Sh36)が推奨されてい
る.しかし,凍結肩における内転制限とSh36との関連性について
の報告は渉猟し得ない.そこで本研究の目的は内転制限とSh36
との関連を明らかにする事とした.
【方法】
対象は,2023年8月~ 2024年4月までに当院で凍結肩と診断さ
れた61名61肩(男性21名,女性40名,平均年齢60.7±12.9歳)と
した.炎症期(安静時痛・夜間時痛), ISAKOSの基準に該当した
拘縮肩,頸部疾患,両側症例は除外した.調査項目は年齢,性
別,Sh36,内転制限テストとした.統計解析は内転制限陽性群
(陽性群),内転制限陰性群(陰性群)の2群に分け,年齢,Sh36
をMannWhitneyのU検定.性別をχ2検定で実施した.有意水
準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理規則を厳守して実施
した.
【結果】
対象61肩のうち,陽性群27肩(44%),陰性群34肩(56%)であっ
た.Sh36における群間比較zzの結果,可動域:陽性群3.1±0.6,
陰性群3.4±0.6,筋力:陽性群2.6±0.7,陰性群3.1±0.8で陰性
群が有意に高値であった(p<0.05).疼痛:陽性群3.2±0.5,陰
性群3.3±0.7,健康感:陽性群3.6±0.4,陰性群3.7±0.5,日常
生活動作:陽性群3.3±0.5,陰性群3.5±0.6,スポーツ:陽性群2.2
±1.0,陰性群2.6±0.9では有意差を認めなかった(p>0.05).
【考察】
本研究において,陰性群ではSh36における可動域,筋力の領域で
有意に高値を示した.先行研究においてSh36における可動域,
筋力の領域と自動肩関節可動域の間に相関を認めるとされており
本研究と同様の結果となった.その他の領域で有意差出なかった
要因として,炎症期を除外している事,内転制限の影響を受けづ
らい項目があった事,スポーツ活動を行っている症例が少ない事
が挙げられる.本研究において内転制限が凍結肩患者のQOLにも
関与する可能性があり,今後は内転制限の改善がQOLに影響を与
えるか検討していきたい.
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赫 眞聖, 須田 祐貴, 後藤 悠人, 伊藤 大将, 川上 途行
セッションID: O4-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
下肢装具療法は,脳卒中患者の歩行障害に対する有効な理学療
法介入の一つである.一般的に,理学療法介入は発症早期から実
施することでより良い機能改善が見込まれるとされているが,下肢
装具療法についてはどの時期に使用・作成すべきか明らかにされて
いない.そのため,本研究では下肢装具の使用・作成時期を整理
することを目的にスコーピングレビューを行った.
【方法】
本レビューは1975年6月から2024年5月までに掲載された原著論
文を,PubMedおよびWeb of Scienceを用いて検索した.検索
キーワードは,第1キーワードを脳卒中(stroke),第2キーワード
を下肢装具(foot orthoses,braces)とし,キーワード内はOR
検索,キーワード間はAND検索とした.採用基準は,脳卒中患者
を対象としている,下肢装具を使用している,装具の使用・作成
時期が記述されているものとした.論文選択は,2名の担当者が
それぞれ独立して行い,意見が異なったものは第3の担当者が決
定した.採用された研究から,研究デザイン,下肢装具の種類,
装具の使用・作成時期,機能評価,結果を抽出した.
【倫理的配慮】
本研究はレビューであり倫理的配慮を必要としない.
【結果】
587編の論文が抽出され,7編が本研究の採用基準に合致した.
長下肢装具の作成時期に関するコホート研究が1編,短下肢装具
の作成時期に関する無作為化比較試験が6編であった.装具の作
成時期は,長下肢装具では発症47日以前の作成群と発症48日以
降の作成群に分けて検討されており,短下肢装具では6編全てが
亜急性期であり,取り込み1週目に装具作成群と9週目に装具作
成群に分けて検討されていた.機能評価は,歩行速度,Timed
Up and Go Test,6分間歩行距離などの歩行パフォーマンスを用
いた報告が3編,歩行中の下肢関節角度や時間・空間的要因など
の歩容を用いた報告が2編,Berg Balance Scale(BBS)を用い
た報告が2編,転倒回数を調査した報告が1編であった.結果は,
早期に短下肢装具を作成した群ではBBSが改善したとする報告が
1編,転倒回数が多いとする報告が1編であり,その他は下肢装具
の作成時期による有意な違いはなかった.
【考察】
脳卒中患者における下肢装具の使用・作成時期について調査した
研究は非常に少なく,その結果は一貫していなかった.今後は,
適切な下肢装具の使用・作成時期を決定するために,装具の使用・
作成の関連因子を調査する必要がある.
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石原 和, 石井 大祐
セッションID: P1-1-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
今回,関節可動域・筋力改善に難渋した症例を担当した.本症例
は肩関節屈曲・外転時に肩甲帯挙上が著明であり,屈曲・外転運
動に伴う肩甲上腕リズムが破綻していた.腹臥位の振り子運動に
より肩甲上腕リズム改善が図れたため,介入内容を報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
60歳代女性.転倒し受傷.左上腕骨近位端骨折に対して手術
(Zimmer APLS plate),術後5日目に退院.術後37日間,アー
ムスリング固定.術後38日当院外来理学療法開始.介入後3か月
で肩関節屈曲・外転時に肩甲骨挙上の代償動作を認め,リーチ
動作や洗髪動作に障害をきたしていた.183日目他院で抜釘術を
実施.関節可動域検査(以下,ROM-T):左肩関節外転:自動
80°,他動100°,屈曲:自動90°,他動110°,外旋:自動0°,他
動5°.徒手筋力検査(以下,MMT):左肩関節外転2,屈曲2,外
旋2,肩甲骨内転2.洗髪動作・リーチ動作困難.肩関節屈曲時
肩甲帯挙上による代償動作が著明であった.まず,代償動作につ
いて患者へ撮影した動画を用いてフィードバックをした.背臥位に
て肩甲上腕関節屈曲の自動介助運動を実施したが,代償動作改善
は不十分であった.筒井らは肩甲骨の可動性,運動機能,固定保
持能力を評価し機能低下がある場合には肩甲上腕関節に先じて訓
練を行うことが望ましいと述べている.そこで,肩甲骨の固定保
持能力を改善する目的に腹臥位での振り子運動および肩甲骨内転・
下制運動を実施した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例報告において症例に目的,方法,倫理的配慮について説明
し書面にて同意を得た.
【介入内容と結果】
腹臥位で振り子運動および肩甲骨内転・下制運動,次いで肩関節
屈曲の自動介助運動を実施したところ,代償動作軽減を認めた.
その結果,ROM-T:左肩関節外転:自動90°,他動100°,屈曲:
自動100°,他動120°と改善し,洗髪動作・リーチ動作も改善を認
めた.
【考察】
腹臥位では肩甲骨の代償動作を抑制し,肩甲骨の制動としての僧
帽筋下部繊維の機能が得られたと考える.その結果,肩甲骨の安
定化を得られ肩甲上腕リズムの改善に至ったと考える.今回の症
例を通して肩甲骨アライメントの重要性および腹臥位での振り子運
動の有用性を再確認できた.
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杉山 正宗, 川井 誉清, 中嶋 良介
セッションID: P1-1-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
肩腱板断裂は肩関節痛を生じる代表的な疾患であり,近年では中
枢性感作の関与が報告されている.腱板断裂患者において疼痛に
関連した脳活動が活発化し,中枢神経系の機能的変化に伴う疼痛
が誘発されると報告されている.しかし,中枢性感作の有無が術
後経過に与える影響については検討されていない.そこで,本研
究の目的は腱板断裂患者の術前の中枢性感作が術後経過に影響
を与えるか検討することとした.
【方法】
対象は当院にて2021年4月より2022年10月までに腱板断裂に
対して鏡視下骨孔腱板修復術を施行した142例142肩とした.断
裂サイズは小・中断裂のみとし,大断裂・広範囲断裂は対象から
除いた.中枢性感作の評価として短縮版Central Sensitization
Inventory(以下CSI-9)を用い,先行研究に準じ,20点以上をCS
群,20点未満をN群の2群とした.また,日本整形外科学会肩関
節治療判定基準(以下,JOA)を計測した.ただし,X線評価およ
び安定性の評価を除く80点満点とした.測定時期は術後6 ヶ月と
した.術後プロトコールは全例,術後4週間装具装着し,術後4週
より自動運動開始した.統計学的検討は各評価項目の2群間の比
較にはマンホイットニーのU検定を用い,有意水準は 5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,対象者に研究の主旨を十分に説明し,同意を得た上で
行った.
【結果】
2群の内訳はCS群21名,N群121名であった.術後6 ヶ月 のJOA
スコアはCS群61(38-80)点,N群66(34-80)点であったが,有意
差は認めなかった(p=0.258).術後6 ヶ月のCSI-9スコアはCS群
16(4-28)点,N群9(2-24)点であり,有意差を認めた(p<0.05).
【考察】
術前のCSI-9は術後6 ヶ月のJOAスコアに影響を与えなかったが,
CSI-9スコアは2群間に差を認めた.平田らは不安,抑うつ,破
局的思考などの心理因子と疼痛強度の関係は中枢性感作によって
媒介されると報告している.そして,橋本らは主観的QOLのうち,
現時点での幸福感や生活の豊かさに注視することで中枢性感作を
低下させる可能性が示唆されたと報告している.術前CSI-9が高
値の患者に対しては,機能やADLの向上を目的とした介入だけで
なく,術後の各時期における機能やADLを患者と共有し,その時
点におけるQOLを向上することが重要であることが示唆される.
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土屋 友里乃, 佐藤 竜太
セッションID: P1-1-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
肩関節疾患の術後患者に対し,徒手療法をはじめとしたホールド
リラックスによる治療効果を検証した報告は,いまだ不十分であ
る.そのため,ホールドリラックスによる治療効果をShoulder36
V.1.3の変化で検討することで,肩関節疾患の術後患者に対する理
学療法の一助になるのか明らかにすることを目的とした.
【症例紹介,評価】
50歳代男性.自宅への帰宅途中で,転倒受傷し当院入院.右肩
関節前方脱臼・大結節骨折にて手術を施行した.外来で週2回の
理学療法を行い,初回評価日は手術日から28日目,最終評価日
を92日目に実施した.評価項目は,Shoulder36 V.1.3,関節可
動域,徒手筋力検査,疼痛をNumerical Rating Scale(NRS)に
て行った.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,口頭で十分に説明し同意を得た.
【介入内容と結果】
治療は,肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・大円筋に対しホールドリラッ
クスを行った.結果として,Shoulder36 V.1.3は,すべての項目
で点数が向上した.また,自動運動での関節可動域は,肩関節屈曲・
伸展・外転・外旋が向上,徒手筋力検査も,伸展と外旋が改善した.
しかしながら,NRSの変化はなかった.
【考察】
ホールドリラックスは,関節可動域の拡大や痛みの軽減に用いる
技術とされている.そのため,肩関節疾患の術後患者に対し,ホー
ルドリラックスによる治療は,自動運動での肩関節可動域の拡大
に有効であると考える.また,Shoulder36 V.1.3は肩関節疾患
のQOLを反映するものである.したがって,現在の患者の生活実
態を把握することができ,生活上での指導やプログラム内容の検
討に繋がるのではないかと考える.
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石原 鉄也, 羽生 亮, 小原 豊
セッションID: P1-1-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
凍結肩に対しての非観血的関節受動術(Manipulation under
anesthesia:以下 MUA)によるROM 改善が多く報告されている.
しかし,MUA後夜間痛が遷延する症例に関する因子を検討した報
告は少ない.そこで,本研究はMUA後夜間痛遷延因子を検討す
ることを目的とした.
【方法】
当院で2023年9月~ 2024年4月までに凍結肩と診断され夜間痛
があった21例(平均年齢59.8土9.7歳,男性5例,女性 16例)を
対象に MUAを施行した.夜間痛は1晩に1回以上覚醒があったも
のとした.術後4週時点で夜間痛が消失していた群を消失群(18例)
残存していた群を遷延群(3例)に分類した.2群間で術前,術後1
~4週時点でのROM( 屈曲,外転,1st外旋,2nd外旋,2nd内旋,
3rd内旋,結帯),疼痛検査(屈曲,外転,結帯NRS),筋出力
検査(1st外旋抵抗)を測定し比較検討した.統計処理はshapiro-
Wilk検定後,welchのt検定を用い有意水準を5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告を行うにあたり,ヘルシンキ宜言に基づいて患者に対し,口
頭および書面にて説明し,同意を得た.また,本研究は当院の倫
理規定に則り行った.
【結果】
術前ROMは屈曲(消失群117.2±26.2°遷延91.6土7.6°)外転(消
失群100土29.4°遷延群 56.6±23°)1st外旋(消失群24.7土15.8°
遷延群6.66±5.7°)3rd内旋(消失群5.6土13.2° 遷延群-16.6土
15.2°)であり各様間で遷延群が有意に低値だった.術後1週外転
NRS,3rd内旋ROM,2週外転NRS,ROM( 1st外旋,3rd内旋),
1st外旋抵抗,3週外転NRS,3rd内旋ROM,1st外旋抵抗,4
週外転NRS,ROM(1st外旋,3rd内旋)1st外旋抵抗で遷延群が
有意に不良だった.
【考察】
MUA術前の重度な可動域制限は術後の可動域改善の不良内子と
して報告されている.今回の結果から夜間痛に関しても術前の可
動域制限は夜間痛遷延因子である可能性が示唆された.術後遷
延群の1st外旋,3rd内旋が低値だった原因として痛みが挙げられ,
腱板筋出力低下による骨頭の不安定性が痛みを誘発した可能性が
ある.遷延群で1週から4週まで外転NRS が高値だったこと,1st
外旋抵抗力が低下していたことからも腱板筋出力の向上(特に棘上
筋,棘下筋)が重要であることが考えられる.
【結論】
MUA術後早期から腱板トレーニングを行うことで腱板の筋出力を
向上させ骨頭の安定化を困り,疼痛改善を行っていくことが夜間
痛改善に貢献できる可能性が示唆された.
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佐々木 雄大
セッションID: P1-1-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
今回,鎖骨骨幹部骨折術後に重量物を繰り返し運搬したことで鎖
骨上神経領域に触刺激での疼痛が生じた症例に対し,疼痛の軽減
を目標に行なった介入について報告する.
【症例紹介,評価】
60代男性,診断名は右鎖骨骨幹部骨折でプレート固定を施行.
仕事は建築物の清掃,運搬等の作業.術後6 ヶ月で右肩関節可動
域屈曲150°,外転120°,MMT5,術創部周囲皮膚の伸張性低下,
表在感覚軽度低下を認めていた.その後,一時的に仕事復帰し約
30kgの錘がついたカラーコーンを60回程度運搬した後,鎖骨か
ら2横指上部から第2肋骨レベルの範囲に触刺激でVAS86mmの
疼痛が生じた.レントゲン画像には異常は確認できなかった.右
胸鎖乳突筋,僧帽筋上部線維の硬さ,圧痛を認めた.肩甲上腕
関節,肩甲胸郭関節の自動・他動運動では触刺激による疼痛と同
部位に疼痛が生じたが胸鎖関節,肩鎖関節への圧痛は生じなかっ
た.頸部の右側屈,術創部を含む鎖骨周囲皮膚の長軸方向への
弛緩操作で触刺激でVAS 34mmと疼痛軽減がみられた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例はへルシンキ宣言に基づく倫理配慮のもと,対象者に介入
方法について説明し同意を得た.
【介入内容と結果】
僧帽筋上部線維・胸鎖乳突筋リラクゼーション,術創部周囲皮膚
モビライゼーションを実施.その結果,触刺激での疼痛はVAS
15mmに軽減し疼痛が生じた範囲は鎖骨上縁から鎖骨二横指下ま
で縮小した.
【考察】
疼痛の原因は肩甲上腕関節,肩甲胸郭関節の自動・他動運動で疼
痛が生じたが,関節周囲に疼痛が限局していないため関節障害は
除外した.また触刺激程度で疼痛を知覚しているため筋障害も除
外した.頸部の右側屈,術創部を含む鎖骨周囲皮膚の長軸方向へ
の弛緩操作で触刺激による疼痛が軽減したため皮神経の障害が原
因と推測され疼痛が生じている部位から鎖骨上神経が障害されて
いると考える.鎖骨上神経は僧帽筋上部線維・胸鎖乳突筋を包む
頸筋膜浅葉を貫通し鎖骨上を走行している.そのため術創部の瘢
痕化と繰り返しの重量物運搬により僧帽筋上部線維,胸鎖乳突筋
が過収縮し頸筋膜浅葉の過緊張が生じたことで鎖骨上神経が絞扼
されたと考察する.今回,頸筋膜浅葉と術創部の滑走性の向上に
より疼痛の減弱と疼痛範囲の縮小が得られたと考える.
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星 祐吾
セッションID: P1-1-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
強い疼痛によりADL障害が生じている広範囲腱板断裂を伴った変
形性肩関節症患者に対し,疼痛軽減・機能改善・ADL能力向上を
目的にリハビリテーションを行った.
【症例紹介】
70歳代女性右利き.既往歴にリウマチ,白血病, 乳癌(手術),腺
癌(手術)がある.4年前より右肩関節に疼痛があり,他院でリハ
ビリと注射(ヒアルロン酸2回,ステロイド1回)を実施したが改善
がみられず,当院受診.主訴は,洗髪動作や掃除で右肩が痛むこ
と.レントゲン所見より,肩関節裂隙消失がみとめられ,濱田の
分類Grade 4A.エコー所見より,棘上筋・棘下筋・肩甲下筋の
断裂がみとめられた.疼痛は,安静時痛NRS0,夜間時痛0,運
動時痛6 ~ 7.ROMは肩関節屈曲90°/180°,外転80°/170°,外
旋-10°/30°,内旋(C7TD)49cm/22cm.MMTは屈曲3/5,外
転2/5,外旋2/5,内旋2/5.触診により,棘上筋・棘下筋に
萎縮がみとめられた.整形外科的テストは,Neer test+/-,
Hawkins test+/-,full can test+/-,empty can test+/-,
belly press test+/-,外旋抵抗test+/-,内旋抵抗test+/-,
speed test+/-.腋窩神経領域の感覚10/10.三角筋中部線維
の圧痛+/-.肩関節painful arc sign+/-であった.
【介入と結果】
徒手療法は,過緊張となっている三角筋・僧帽筋上部線維・肩甲
挙筋のリラクゼーション,可動域拡大のために関節包のストレッチ,
肩甲骨の可動域訓練を実施.運動療法は求心位を保つために残存
腱板機能筋である小円筋の筋力訓練,上肢挙上を獲得するために
肩甲骨周囲筋・三角筋の筋力訓練を実施.物理療法は,除痛と筋
緊張の緩和を目的として立体動態波の施行,ADL指導を実施.上
記実施したところ,右手を使用した洗髪動作が可能となった.
【考察】
本症例では広範囲腱板断裂を伴う変形性肩関節症があるため,
肩関節可動域・筋力低下が認められ,疼痛による機能低下のため
にADLにも影響が認められていた.残存腱板機能訓練や肩甲骨周
囲の筋力訓練で可能な限りの機能改善を図ったが,機能の改善は
限定的であった.ADLにおいては洗髪動作の指導を行ったところ,
痛みの生じない動作が獲得された.また徒手療法で三角筋の過活
動を抑制し,残存腱板機能筋である小円筋の筋力訓練を継続し,
ADLの改善も行われたことで疼痛も若干軽減された.
【倫理的配慮, 説明と同意】
症例報告にあたりヘルシンキ宣言に基づき,対象者本人に説明し
同意を得た.
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-理学療法士へのアンケート-
吉川 和孝, 小冷 健太, 城田 陽, 太田 正史, 粕谷 裕美子, 榊 麻美
セッションID: P1-2-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
令和4年度の診療報酬改定で透析時運動指導等加算が新設され
た.しかし内部疾患系のリハビリテーションは運動器系や神経系
と比較すると,認知されていないとされている.そこで理学療法士
(以下,PT)を対象に,腎臓リハビリテーション(以下,腎リハ)の
認知度について調査することを目的にアンケート調査を行った.
【方法】
33施設のPT 784名を対象にGoogleフォームを用いたアンケート
調査(2023年12月6日~ 12月23日)を行った.質問内容は経験年
数,所属施設の病期(急性期・回復期・生活期),透析実施の有
無,①腎臓リハという言葉を知っているか,②腎臓リハ指導士とい
う資格を知っているか,③糖尿病足病変で運動器リハビリテーショ
ンが行えるようになったことを知っているか,④透析時運動指導等
加算が新設されたのを知っているかとした.アンケート結果は単
純集計を行い,経験年数での比較はマン・ホイットニーのU検定,
所属施設の病期での比較と透析実施の有無での比較はカイ二乗検
定を行い,所属施設の病期での比較ではボンフェローニ補正を行っ
た.統計解析には改変Rコマンダーを用い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき個人が特定されないように発表を行う事
を説明し,回答をもって同意が得られたものとした.
【結果】
424名から回答があり,回答率は54%であった.単純集計は①知っ
ている83%,知らない17%,②知っている58%,知らない42%,
③知っている22%,知らない78%,④知っている33%,知らない
67%であった.経験年数での比較は①~④に有意差(p<0.01)を
認め,経験年数が長いPTが認知している傾向があった.病期での
比較は急性期と回復期では①・②・④で有意差(p<0.01)を認めた.
また急性期と生活期では②と④で有意差(②p<0.01・④p<0.05)
を認め,急性期に所属しているPTは認知している傾向があった.
透析実施の有無では③以外に有意差(p<0.01)を認め,透析を実
施している施設のPTは認知している傾向があった.
【考察】
経験年数の増加とともに知識が増え,腎リハに関することも認知し
ていると考えた.また急性期では透析を実施している施設が多く,
臨床現場で腎リハに触れていることから認知していると考えた.腎
リハという言葉は約8割のPTが知っていると答えたが,腎リハ指
導士や診療報酬関係に関しては知らないPTも多くいることが示さ
れ,認知度向上に向けた活動が必要である.
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渡邊 孝明, 若梅 一樹
セッションID: P1-2-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
TAFRO症候群は血小板減少,全身浮腫,腎機能障害など多彩
な症状を呈する全身炎症性疾患である.非常に稀な疾患であり,
TAFRO症候群に対する理学療法(PT)の報告は極めて少ないのが
現状である.今回,入院中にTAFRO症候群が重症化した患者に
対するPTを経験したため報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
症例は70歳代の男性(発症前体重85kg)である.発熱,全身浮
腫,および労作時呼吸苦の精査加療目的で入院し,TAFRO症候
群の診断にてステロイド(PSL,45mg)と利尿剤を主とした治療を
開始した.PTは第12病日に開始した.PT開始時点で体重98kg,
C反応性蛋白(CRP)15.25mg/dL,血小板(PLT)67万/μL,およ
び推定糸球体濾過量(eGFR)22.7ml/分/1.73m2であった.Short
physical performance battery(SPPB)は11/12点であった.
労作時呼吸苦はあったが,室内気で酸素化は良好であった.機
能的自立度評価表の運動項目(mFIM)は79点であり病棟内を独
歩で自立していた.第28病日から増悪し,体重100.4kg,CRP
19.10mg/dL,PLT 90万/μL,およびeGFR 30.0ml/分/1.73m2
となり,酸素投与を開始した.第28病日に呼吸苦のため寝たき
りとなり,mFIMは22点に低下した.その後ステロイドパルス療
法とdexamethasoneを開始し,第41病日に体重84.1kg,CRP
0.72mg/dL,PLT 21万/μL,およびeGFR 44.3ml/分/1.73m2と
なり,症状が緩和されたため離床を再開した.第48病日のSPPB
は5点,mFIMは41点であった.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例報告の趣旨と内容を本人へ書面にて説明,同意を得た.な
お,本報告に際して用いた胸部レントゲン画像は診療放射線技師
によって撮影されたものである.
【介入内容と結果】
重症化前の期間は二次的合併症予防の運動療法,寝たきりの期間
はベッド上の筋力増強運動と神経筋電気刺激,離床再開後は筋力
増強運動,有酸素運動,およびADL練習を中心に実施した.体
重増減,炎症反応,易出血性,および腎機能障害に注意しながら
運動負荷を漸増した結果,有害事象を生じることなくPTを実施で
きた.第69病日に体重71.2kg,CRP 0.19mg/dL,PLT 362万
/μL,eGFR 60.1ml/分/1.73m2,SPPB 10点,6分間歩行試験
304m,およびmFIM 88点に改善し,第71病日に自宅退院となっ
た.
【考察】
重症化したTAFRO症候群患者に対してリスク管理を行いながら
PTを実施した結果,有害事象を生じずに運動機能,ならびに
ADLを改善することができた.
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大関 寛子, 宮 元希, 大関 直也
セッションID: P1-2-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
2021年度血液透析患者実態調査報告書で,60歳以上の者は
75%以上の割合を占め,介護認定申請済みの者は27.5%であった
と報告されている.介護保険制度で利用できるサービスでは介護
保険が優先して適応されるため,高齢化する血液透析者では制度
利用を余儀なくされる.また,2024年介護報酬改定での訪問看
護Ⅰ5の新たな減算要件により,その利用実態に変化が生じる可能
性が考えられた.そこで本研究は医療機関と介護保険施設の連携
を図るため,外来透析クリニックでの介護保険申請と利用実態を
把握することを目的とした.
【方法】
対象は当院で外来透析を実施している65歳以上の者とした.その
選定は,1)性別不問,2)ADL状況不問,3)認知症の有無不問と
し,4)本研究への参加にあたり十分な説明を受けた後,研究対象
者本人の自由意志による同意が得られた者とした.除外基準は,1)
同意が得られない者,2)主治医により参加不適切と判断された者,
3)調査期間中に入院の転機もしくは死亡した者とした.
調査の種類は単施設・非対照・非盲検研究とした.また臨床にお
いて,同一対象者における介護報酬改定後の利用変化の可能性に
ついての探索的研究として本研究を位置付けた.2024年度介護
報酬改定前に調査を終了する設定とし,期間は2024年3月1日か
ら同年3月31日とした.調査項目は大項目として,1)介護保険申
請の有無,2)認定介護度,3)利用サービスの種類とした.
【倫理的配慮】
倫理委員会の承認を得た.
【結果】
対象者は139名であり,有効回答数は131件で94.2%であった.
要支援者は7名で,要介護者は39名であった.要支援では1が2名
(4.4%),2が5名(11.1%)であった.要介護では1が6名(13.0%),
2が24名(52.3%),3が6名(13.3%),4が2名(4.4%),5が1名
(2.2%)であった.利用サービスは通所が25名(54.3%),訪問10
名(21.7%),短期入所1名(0.7%),施設0(0.0%),であった.
【考察】
透析者の認定結果は,同年齢の一般人の結果と比較すると偏り
が認められ,要介護4と 5の頻度が少ないという特徴があると
されるが,本研究対象も同様の結果であった.ただし要介護2が
52.3%であり既報と比べても偏りがあった.自立度が高く,通所
でのサービスを多く利用していたことから,今後通所施設との医療
介護連携が重要であるとともに,介護度を重症化させない取り組
みが必要であると読み取れた.
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大関 直也, 大関 寛子
セッションID: P1-2-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【目的】
令和5年度の当院外来血液透析者の介護保険申請実態調査で,
65歳以上の者は139名おり全体の58.2%であった.その内,要
支援者は7名,要介護者は39名であることが分かっている.高齢
血液透析者の生活状況は介護保険の利用状況と密接に関連する.
本研究は医療機関と介護保険施設の連携と,介護度を重症化さ
せない為の取り組みの必要性の観点から,透析クリニックにおけ
る介護保険認定のある透析者の透析中運動療法の実施実態を把
握することを目的とした.
【方法】
対象は外来で透析を実施している65歳以上の者とした.その選定
は,1)性別およびADL状況と認知症の有無は不問とし,2)本研
究への参加にあたり十分な説明を受けた後,理解のうえ対象者本
人の自由意志による同意が得られた者とした.除外基準は,1)同
意が得られない者,2)主治医により参加不適切と判断された者,3)
調査期間中に入院もしくは死亡した者とした.単施設・非対照・非
盲検研究とし,本研究は臨床における同一対象者への介護度重症
化予防についての探索的研究として位置付けた.調査期間は令和
6年3月1日から同年3月31日とした.調査項目は大項目として,1)
透析中運動療法実施の有無とその内容,2)身体機能評価データ
の有無と結果,3)非透析日および透析日の活動度とした.
【倫理的配慮】
倫理委員会の承認を得た.
【結果】
対象者139名のうち,書面による同意を得られた者は131名であっ
た.要支援者・要介護者の合計は46名であり,透析中運動療法
実施者は33名(71.7%)であった.33名の運動内容は,ベッド上
自動運動が17名,理学療法士による個別運動療法が10名,ベッ
ド上有酸素運動が18名(重複あり)であった.身体機能評価データ
は,介護認定のあった46名中31名で記録があった.また,透析
中運動療法実施のあった33名のうち身体機能評価データがあった
者は25名であった.活動度において,4000歩以上あった者は,
非透析日が8名,透析日が4名(重複あり)であり,介護度の内訳は
要介護1が5名,要介護2が7名(重複あり)であった.
【考察】
介護保険認定のある外来透析者における透析中運動療法の実施
実態を把握した.医療機関と介護保険施設の連携を図ると共に,
介護度を重症化させないための透析中運動療法の取り組みが必要
である.特に当院は理学療法士が常勤3名,非常勤1名が在籍し
ており,介護保険施設と緊密な連携を提供できる可能性がある.
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宮川 倖実, 藤崎 公達, 馬場 玲子裕美子, 毛利 悦子, 玉館 秀恵, 成田 雄一, 中山 裕美
セッションID: P1-2-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
当院では糖尿病支援チームを構成しており,多職種で糖尿病症例へ
の支援を行っている.今回,COVID-19流行下に教育入院を行った
2症例に対して,Zoomによる理学療法支援を行ったことにより,運
動習慣を獲得し血糖コントロール改善に寄与した2症例を報告する.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例には報告の趣旨や,個人情報の保護等に関して説明し,同
意を得た.
【症例紹介】
症例1:50代男性.検診で初めて糖尿病を指摘される.-6.8kg/
年の体重減少と口渇・多飲・多尿を認め,血液検査にて随時血糖
330mg/dl,HbA1c 15.9%と血糖コントール不良を呈し,Ⅰ型糖
尿病と診断される.
症例2:60代女性.口渇・下肢の痺れに加え,随時血糖261mg/dl,
HbA1c 13.5%と血糖コントロール不良を指摘されⅡ型糖尿病と診断
される.既往歴の左足関節骨折の影響により運動機会が減少した.
【問題点と目標】
症例1:過去の運動経験は無く,通勤時の徒歩以外に運動の機会
が無かった.この問題点に対し,日常生活内で運動機会を増やす
等の生活習慣の改善を目標とした.
症例2:足関節骨折治癒後に残存した疼痛や疲労感に伴い,血糖
コントロール不良や運動量減少や日常生活動作の制限が出現し
た.この問題点に対し,基本動作の改善による運動時痛の軽減に
伴う運動量の増加を目標とした.
【経過】
症例1:座位のまま昼休みや自宅でできる簡単なストレッチを指
導.加えて,入院期間中や退院後の有酸素運動の継続を促すため,
病棟内のウォーキングを行うよう促した.
症例2:足関節骨折による運動量減少に対し,生活動作指導を行
いながら運動継続の為,運動指導や靴の調整等を行った.経過中
の疼痛には,ストレッチやリラクゼーションを指導し,退院後自主
訓練を支援した.
【結果】
理学療法支援により運動習慣を獲得したことで,症例1は随時血
糖70mg/dl,HbA1c 6.4%.
症例2は随時血糖101mg/dl,HbA1c 5.7までコントロールが可能
となった.その後も定期的な外来通院が継続されており,生活習
慣継続への支援や指導・教育にて血糖コントロールを継続するこ
とが出来ている.
【考察】
COVID-19流行下により対面での支援が出来ない状況であっても
Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールを活用すること
により,円滑なコミュニケーションを取り,観察から得られる表
情や動作を確認しながら支援を行うことが可能であった. 今後も
Zoomによる取り組みや介入症例を増やして効果検証の必要性が
あると思われる.
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齋藤 宏樹, 梅田 和也
セッションID: P1-2-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【諸言】
近年本邦では高齢透析患者が増加しており,透析患者への透析時
リハビリテーション(以下透析リハ)のニーズも高まっている.一方
で透析リハと心肺運動負荷試験(以下CPX)を導入して定量的に効
果判定をしている施設は少ないのが現状である.今回9 ヶ月間の
透析リハを施行し,運動耐容能と自覚所見の改善を認めた症例の
経験を報告する.
【症例紹介】
70歳代女性,腎硬化症疑いによる慢性腎不全で透析導入.既往
歴は高血圧症と慢性心不全.ADL自立,IADLは外出時に家族が
付き添っており,長距離歩行でBorg scale 15程度の疲労感があっ
た.心臓超音波検査はEF 76%,RVSP 39mmHgであった.
【方法】
介入初期,中期,終期で身体機能,CPX,血液生化学検査の評
価を行った.透析時間中に負荷量可変式エルゴメーター(SDG社製)
用いて,有酸素運動を行った.運動処方はAT 1分前の運動強度
から開始し,Borg scaleが13になるよう段階的に負荷を漸増した.
【結果】
実施期間中の心血管イベントはなかった.
Short physical Performance Battery(SPPB)は初期から終
期に2/12点から8/12点への改善を認めた.初期から中期におい
てPeak VO2は9.6ml/min/kgから12.7ml/min/kg,AT WRは
27Wから33W,VO2/WRは4.48ml/min/Wから6.43ml/min/
W,Peak VO2/HRは3.5 ml/beatから4.5ml/beatへの改善
を認めた.NYHA分類は初期から終期でⅡからⅠまで改善した.
IADLは一人での外出ができるようになり,長距離歩行時のBorg
scaleは11まで低下した.
【考察】
Peak VO2/HRの改善から,心拍出量の増加により,末梢への酸
素運搬能が高まったことが示唆される.また,有酸素運動の継続
により,骨格筋における酸化酵素活性の改善が運動耐容能の向上
に寄与したと考える.上記の改善が長距離歩行時における自覚所
見の変化に繋がったと推察する.
【結語】
透析リハとCPXの実施は,運動継続率を高め,身体機能及び自覚
所見を改善させる効果的な介入手段であると考える.また,運動
処方や効果判定にCPXを用いて評価を行うことで適切な運動強度
を提供でき,運動耐容能に関連する要素をより正確に評価するこ
とができる.今後の展望として,徒手筋力計を用いて筋力を評価し,
より正確な運動耐容能の関連因子を把握することが必要である.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき個人が特定されないよう匿名化し,個人
情報の扱いには十分に注意した.
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熊倉 範子, 小島 渉
セッションID: P1-3-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
全身性エリテマトーデス(以下,SLE)は,全身倦怠感,易疲労性,
食欲不振などの症状があらわれ,患者のADL低下に大きく影響す
る.先行文献にて補助的治療としての運動療法が疲労感を軽減し
たという報告を散見する.そこで,今回は運動療法を訪問リハビ
リテーションで実施した際に同様の効果を得られるか検討した.
【症例紹介】
80代女性.既往症として抗リン脂質抗体症候群,洞不全症候群
にてペースメーカー埋め込み術を2010年に施行.2019年に横静
脈洞血栓症・静脈性脳梗塞を発症したが,後遺症はほぼない状態
で自宅退院し,転倒し左肩骨折.自宅にて保存療法で治療し,現
在も肩の可動域低下がある.2020年にSLEの診断.訪問リハビリ
テーションは,2022年1月より実施.
【評価】
①BBS(Berg Balance Scale) ②SPPB(Short Physical
Performance Battery)③ 国際標準化身体活動質問票④BFI
(Brief Fatigue Inventory)
【介入内容】
訪問頻度は1回/週.介入内容としては,①ストレッチ:下腿三頭筋,
肩の振り子運動を自主練習で指導.②高頻度低負荷の筋力増強:
足踏み運動(10回×1セット),時間をあけ何度も行っても良いよう
に自主練習で指導.③継続した有酸素運動:体調が良い日にご主
人との屋外歩行を指導.④療養相談:症状の傾聴.⑤デイケアの
運動量についてもデイケアに相談しながらコントロールした.
【結果】
BBS:50→51,SPPB:14→14,国際標準化身体活動質問票:座っ
たり寝転んだりして過ごした時間が7.5h→5 ~ 6hに減少,BFI:全
体的に疲労軽減傾向. 活動:デイケアの回数が2回/週に増え,
家族の支援で遠出の外出をすることができた.
【考察】
本症例は,徐々に疲労感が軽減し,御本人の希望であった旅行が
実現できた症例である.症例の活動意欲があがったのは,①症状
の傾聴による精神面のサポートにより,本人の参加・活動への意
欲が増進したこと.②地域サービスと生活の中での運動量のトー
タルマネージメントを行うことで,疲労感を軽減することができた
ことが影響していると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
今回の発表に際して,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮
し,個人が特定されるような情報を開示しないことを本人に説明し,
同意を得た.
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神経筋再教育によりBMS・FIMに改善を認めた一例
横森 真美, 山縣 巧, 髙橋 旦乃, 伊藤 龍成
セッションID: P1-3-2
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
一般にギランバレー症候群(以下GBS)は予後良好と考えられてい
るが,近年回復遅延例の報告も散見され,山岸らは急性期に人
工呼吸器装着が必要な例や発症から6 ヶ月後も歩行に介助を要す
る例などが存在すると報告している.当院は維持期でありながら,
上記で述べたように発症から6 ヶ月以上経過したが実用的な歩行
獲得に至らない患者や,日常生活に介助を要する患者が更なる回
復を望んで入院してくる事がある.
そうした中で今回は回復遅延型に分類される重症GBS症例に対
し,約6 ヵ月間継続して神経筋再教育を行ったことで麻痺の改善
が認められBMS・FIMの改善に至った一例を報告する.
【症例紹介】
70代女性,専業主婦.X年Y月一過性の発熱後,下肢から上肢に
広がる筋力低下が出現しGBSと診断される(MMT上肢0,下肢0,
体幹0レベル)その後, X年Y+1月回復期リハ病院へ入院され,約5 ヶ
月間のリハを経て当院に入院される.当院入院時の身体機能は
MMT上肢1 ~ 2,下肢2,体幹3レベル.感覚障害はなし.肩関
節,肘関節,手指,膝関節,足関節に拘縮・疼痛あり.BMS 11点,
FIM 49点.その他,車椅子自走,立位保持,歩行はそれぞれ不
可であった.
症例のHOPEは歩けるようになりたい,自分で食事を取れるように
なりたい,自分で本を読めるようになりたいであった.
【説明と同意】
本発表は当院の倫理委員会に基づき,症例に発表の趣旨を説明し
同意を得た.
【介入内容と結果】
介入時からoverworkに注意し,上下肢・体幹に対し神経筋再教
育を実施.開始から約3 ヶ月経過した時点で麻痺の改善に伴い,
基本動作練習(立ち上がり,,移乗,歩行)も併用した.
最終評価時,MMT上肢3 ~ 4,手指2 ~ 3,下肢4 ~ 5,足関
節背屈3,体幹5レベル.BMS 32点,FIM79点.
前腕支持型歩行器で屋内外100m連続歩行可能.車椅子自走可能,
支持物無しでの立位保持可能,両手すり把持での階段昇降可能.
拘縮,疼痛改善あり.
症例のHOPEであった食事や読書は職員がセッティングすることで
自身で可能となった.
【考察】
今回,発症から半年経過した重度GBSに対し継続して神経筋再教
育を行ったことで,麻痺の改善が認められた.またoverworkになら
ないよう個別筋の障害レベルに合わせた負荷量の調整を行ったこ
とが回復を促進したと考える.回復遅延型の重度GBSであっても,
治療を継続する事で身体機能の向上が認められBMS・FIMの改善
に繋がる可能性が示唆される.
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岡部 みなみ, 糠澤 達志, 森田 智之
セッションID: P1-3-3
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
Crow ーFukase症候群とは,末梢神経障害を必発とし形質細胞
の単クローン性増殖を基盤に多様な症状を呈する稀な全身性疾患
である.新規治療によって予後の改善した症例のリハビリテーショ
ン(以下リハ)の経過について報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
64歳男性,他疾患治療のため入院中,歩行障害等が出現しCrow
ーFukase症候群と診断された.段階的にサリドマイド療法を実施
後,大量化学療法を伴う自己末梢血幹細胞移植を実施し,その後
リハ目的に当院に入院した.筋力はMMTで左右共に股関節周囲
は3,膝関節屈曲2,伸展3,足関節は0だった.関節可動域は股・
膝関節伸展制限,足関節背屈制限,体幹屈曲回旋制限,上部腰椎・
胸椎の伸展制限があった.歩行はU字歩行器を使用し一部介助で,
体幹・股関節・膝関節屈曲位で前方重心であり歩行器に寄りかかっ
て歩行していた.体幹を伸展して下肢に荷重すると膝折れが生じ
ることがあった.既往歴に椎間板ヘルニアがあった.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に基づく倫理配慮のもとご本人に十分な
説明を行い,同意を得た.
【介入内容と結果】
関節可動域の拡大,立位及び座位姿勢の修正,筋力増強訓練,
歩行訓練を中心に介入した.歩行訓練では負荷が強くなると立位
姿勢が不良となるため,耐久性に応じて負荷量を調整した.自主
トレーニングとして歩行訓練とストレッチを導入した.6分間歩行
は緩やかに上昇したが,発熱により病棟隔離となった後,歩行耐
久性が大きく低下した.その後腰痛が発生し,再び歩行耐久性が
上昇傾向に転じるまでに3 ヶ月を要した.自宅内及び屋外短距離
は両ロフストランド杖使用,屋外長距離は歩行器を使用し自立と
なり,在宅復帰となった.筋力は左右共に股関節周囲は4,膝関
節屈曲3,伸展4,足関節は1となった.関節可動域は全身的に改
善し,歩行中の屈曲姿勢・前方重心にも改善が見られた.
【考察】
関節可動域,姿勢及びADLの向上は見られたが,先行報告に比べ
筋力の回復は緩やかであった.また歩行耐久性の向上に難渋した.
歩行耐久性に関する先行報告はなかったが,本症例に特徴的な指
標であった.本疾患は長期的に末梢神経障害の改善が期待できる
と言われている.それに伴う能力改善のためにも体調や運動習慣,
運動量などをセルフマネージメントできることが重要であると考え
る.
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川畑 直也, 森田 智之, 青木 重陽
セッションID: P1-3-4
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに,目的】
脳外傷後遺症により全介助となった症例を担当した.本症例は入
院当初,車椅子乗車時間の拡大や移乗方法の確立が困難であっ
た.本症例に対して移乗方法の検討,車椅子シーティング,身体
機能への介入を行い,在宅復帰の見通しが立ったため報告する.
【症例紹介,評価,リーズニング】
症例は20代男性,診断名は脳挫傷,外傷性くも膜下出血,脳外
傷後遺症だった.現病歴は2022年X月Y日に受傷し, Z日(Y+400
日後)当院に入院した. 従命は困難で,随意運動は見られなかっ
た.入院時はリクライニング車椅子に乗車したが,定頸がなく,ヘッ
ドサポートから頭部が落下しやすかった.四肢の筋緊張は高まり
やすく,車椅子上座位姿勢が崩れやすかった.前院では車椅子乗
車時間は40分程度,移乗方法は3人介助で行っていた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告にあたり,口頭でご家族に説明し,口頭にて同意を得た.
【介入内容と結果】
病棟では理学療法士(以下PT)と看護師3人による持ち上げ介助か
ら開始し,Z+52日後に看護師3人のみで安定して行うことができ
るようになった.車椅子の設定はティルト・リクライニングをベー
スにエンジニアと協同し,特に頸部が安定するように,ヘッドサポー
トの試作と調整を行った.在宅生活ではリフトを使用しての移乗と
なることを想定し,作業療法士と連携してリフトやスリングシート
を選定し,ご家族がリフトの使用方法を練習する機会を複数回設
けた.終期評価(Z+169日)では,車椅子で安定した座位が保持で
きるようになり,車椅子乗車時間は連続2時間となった.車椅子上
での筋緊張は高まることもみられるが,一定の時間で緊張が落ち
着く場面が増えた.在宅での移乗はリフトを導入することとなった.
【考察】
病棟での移乗について,PTと看護師が協力して移乗介助を行った
ことが,介助者の移乗介助技術の習熟につながり,座位時間の拡
大において有効だったと考える.在宅での移乗について,先行事
例ではリフト導入においてPTの関わり方としては,体験援助,機
種と吊り具の選択,使用方法の指導,導入の援助であった.本症
例においても同様の関与となり, PTが障害像を理解し,福祉機器
の指導ができる必要性を感じた.本症例では安定して乗車できる
車椅子ができたことと,移乗方法を確立したことが離床や自宅復
帰に重要な役割を果たしたと考える.
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曽木 健太, 桑原 希望, 福岡 宏之, 鈴木 啓太, 武蔵 晃平, 末永 達也, 宮上 光祐
セッションID: P1-3-5
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
アルコール性ニューロパチーの治療には禁酒と薬物療法に加えて,
リハビリテーションが挙げられるがその詳細な効果の報告は少な
い.起立や段差昇降を中心に介入した結果,バランス能力が向上
しADLが改善したことで復職に至った症例を経験したため報告す
る.
【症例紹介】
40代男性.病前は事務職であり,電車にて通勤しADLは自立して
いた.毎日大量に飲酒する生活を送っていた.1病日,発熱及び
立位困難となり,救急搬送されCOVID-19と診断.その後帰宅し,
自宅にて生活.解熱しても立位困難な状況は続き,36病日,前院
へ入院.血液検査にて葉酸,ビタミンB1低下を認め,脛骨神経の
活動電位が遠位で導出されず,39病日,アルコール性ニューロパ
チーの診断.76病日,リハビリテーション目的にて当院へ入院.
【倫理的配慮】
本発表はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に説明を口頭にて十分
に行い,同意を得た.
【介入内容と結果】
入院当初,表在・深部感覚は正常,両側下肢腱反射は消失.
MMT両側股関節5,膝関節2,足関節3,膝伸展筋力(右/左)
0.18/0.17(kgf/kg),支持なしでの起立不可,8.5㎝段差昇降膝
折れ著明.独歩にてふらつき著明,膝伸展位固定を認めた.10m
歩行16.0秒,FBS 36点,運動FIM 59点,体幹失調は認めず.
介入は,10RMを基準に翌日の疲労度,過用性筋力低下に注意を
払い,起立や段差昇降中心に課題指向型練習を実施した.102
病日には膝伸展筋力0.38/0.31(kgf/kg),50cm台からの起立,
20cm段差昇降可能となり,独歩にて膝伸展位固定の頻度が減少
した.10m歩行7.9秒,FBS 53点,運動FIM 63点,ADL独歩自
立.137病日には膝伸展筋力0.38/0.34(kgf/kg),30cm台から
の起立,25cm段差昇降,独歩にて屋外歩行可能,10m歩行7.2
秒,FBS 56点,運動FIM 87点まで改善し自宅退院.
【考察】
アルコール性ニューロパチーは軸索障害が主体である.運動によ
る再生軸索の成熟促進を示唆した報告があるため,起立や段差昇
降を中心に行った.その結果筋出力が向上しFBSが20点改善した.
FBSの臨床的最小重要変化量は,同じ末梢神経障害であるギラン
バレー患者において10点と報告されているため,臨床的に意義の
ある改善を果たしたと考える.FBS向上に伴いADLも向上し,退
院時には屋外歩行も可能となり復職に至るまでに改善した.アル
コール性ニューロパチー患者に対し,起立,段差昇降を中心とし
た運動は機能改善に重要と示唆された.
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高尾 敏文, 永木 雄也, 早川 ヒロシ, 出澤 真乃助
セッションID: P1-3-6
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
パーキンソニズムは主に服薬によってコントロールされる.代表的
な治療薬であるアマンタジン(AMD)は,服用後1-2時間後に血中
濃度がピークとなり,半減期(約12-24時間)まで直線的に減少す
るが,薬効は一様ではないといわれている.そのため,理学療法
実施場面においても服薬の効果を個別に評価し対応することが重
要である.今回,パーキンソニズムを呈する症例に対し,服薬か
らの経過時間によって運動機能等がどのように変化するかを評価
したので報告する.
【症例紹介】
80歳代男性.10年以上前に脳梗塞とパーキンソン病の診断を受
けた.2023年6月,家族の介護負担が増し自宅生活が困難となっ
たため,介護老人保健施設へ入所となった.
【評価】
入所時,H-Y分類 Ⅲ度,BI 60点,パーキンソニズムに対しAMD
(100mg/回,3回/日)を服用していた.本症例に対し,AMD
服用から2時間後(2h)および5時間後(5h)の2条件において,
UPDRS(part Ⅲ),10m歩行テスト,Mini-BESTest,von Frey
testを実施した.各検査は日を変えて3回計測した.
【倫理的配慮】
対象者に対し検査の意義および目的を口頭にて説明し,結果の一
部または全部を公表することについて,口頭にて同意を得た.
【結果】
評価結果をMean(SD)で示す.2hでは,UPDRS:34.7(1.9)
点,歩行速度:0.54(0.03)m/sec,歩幅 0.21(0.01)m,歩行
率 153.4(6.6) steps/min,Mini-BESTest:9.7(1.7)点であった.
5hではそれぞれ41.3( 3.3)点,0.45(0.06)m/sec,0.21(0.01)
m,130.2(16.3)steps/min,7.7 (1.2)点であった.von Frey
testでは,各刺激(0.4 - 2.0g)に対する正答確率が,2hに比べて
5hには左右手足において20 - 50%程度低下した.
【考察】
本症例では,AMD服用2時間後に比べ,5時間後の運動および感
覚機能が低下しており,AMDの効果によると推察される症状の変
動を客観的かつ明確に捉えられたものと考えている.この結果は,
理学療法の実施時間帯により課題難易度を調整するといった対応
をとるための基本情報となり得る.また,このように症状の変動
を把握することにより,理学療法実施場面以外においても,薬効
によらない日々の体調変化にも気付くことができる可能性があり,
サービス提供者としても重要な評価であったと考える.
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~転倒恐怖感とバランス評価に着目して~
小林 愛美, 桂田 功一, 三小田 桃子, 大沼 雄海, 神居 寧, 髙橋 仁
セッションID: P1-4-1
発行日: 2024年
公開日: 2025/01/24
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
片麻痺患者の大腿骨近位部骨折は発症年齢が低く,麻痺側に骨折
を起こしやすい (古川ら,2020).また,脳卒中片麻痺患者におい
て歩行非自立群では,転倒に対する恐怖という主観的評価と,担
当療法士の「対象者がどの程度転倒せずに動作を行えるか」に基づ
いた評価が不一致となりやすいと報告されている(北地,2013).
今回,脳出血後遺症による麻痺側に大腿骨頸部骨折を受傷した症
例に対しバランス評価とModified Falls Efficacy Scale(MFES)
を参考にして転倒予防指導を行った.
【症例紹介】
4年前に左視床出血を発症した50歳代女性,要介護3(訪問入浴・
訪問リハビリ・通所リハビリを利用).経頭蓋磁気刺激法目的に当
院へ短期入院歴あり.入院前BRSは右上肢Ⅳ・手指Ⅲ・下肢Ⅳ.
麻痺側上下肢は表在・深部感覚中等度鈍麻,視床痛を認めていた.
屋内は短下肢装具(SHB)と4点杖を使用し自立,屋外は車椅子移
動であった.X-7日,自宅で手すり設置の無い場所での段差昇降
練習中に転倒し右大腿骨頸部骨折を受傷し,X日に右人工股関節
置換術を施行した.
【理学療法内容と結果】
X+2日に理学療法を開始し,術創部の炎症や視床痛を考慮しな
がら関節可動域練習,筋力増強運動,荷重練習を行った.X+14
日,SHBと4点杖を使用し,近位監視下で歩行可能となり,動的
バランス練習や応用歩行練習を追加した.最終評価(X+35日)で
はBBS 40点,MiniBESTest 10点,MFES 32点(風呂に入る3点・
家の中の廊下や畳を歩き回る7点・布団に入る,布団から起き上が
る8点・椅子に腰掛ける,立ち上がる7点・衣服の着脱7点,その
他0点)であった.MFESの「家の中の廊下や畳を歩き回る」は7点で
あったが,BBSでは静的姿勢保持力,支持基底面内での随意運動,
支持基底面外への随意運動の3つの要素で減点されており,転倒
恐怖感と身体機能に乖離を認めた.これらの動作に対してホーム
エクササイズ実施時の環境調整の指導,課題難易度の調整を行い,
X+37日に自宅退院となった.
【考察】
身体機能の把握が十分でないと,動作時の注意の欠如や過信が
生じ,転倒を招く恐れがある.本症例は身体機能と転倒恐怖感に
乖離を認めていた.バランス評価とMFESを結び付けることで,身
体機能の把握を促し,それを考慮した動作指導や環境調整が可能
となり,再転倒予防策を講じることに役立つと考える.
【倫理的配慮】
本発表はヘルシンキ宣言に則り,本人より書面にて同意を得て実
施している.
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