関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 104
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骨・関節系
当院における装具療法への取り組み
*菊池 隼増田 岳彦荻野 雅史井田 真人近藤 麻美松谷 実榎本 陽介塚田 陽一齊藤 理恵野内 宏之田中 直
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抄録

【はじめに】 当院は病床数80床で約8割が脳卒中患者の急性期病院であり,リハビリテーション(以下 リハ)を実施している片麻痺患者に対し,治療用装具の処方・作製を積極的に取り入れている。以前,我々が行った装具処方状況に関する調査で,処方時期の遅延等様々な課題が浮き彫りとなった。また諸家の報告では,装具療法を行う際に,患者の適応決定プロセスへの理学療法士(以下 PT)の関与が少なくなり,しかも装具訓練の適切な実施についての知識と技術が,とりわけ若いPTに不足していると述べられている。当院も半数以上のPTが経験年数3年未満のリハスタッフで構成されており,この警鐘は例外ではない。 当院では平成16年頃より臨床経験の浅いPTを対象に,見学を中心とした装具研修を行っている。そこで今回はこの研修の意義を検討するため,金属支柱付長下肢装具(以下 KAFO)に焦点をあて調査したので報告する。
【対象と方法】 平成13年1月から平成18年12月までに,脳卒中の診断を受け,医師よりリハオーダーされた全680例中,KAFOを処方した31例を対象とした。その内,平成13年から15年の処方例をA群,装具研修が開始された16年以降の処方例をB群とした。調査項目は,リハ開始から装具処方期間,KAFOから金属支柱付短下肢装具(以下 AFO)へカットダウン可能であった症例数及びその期間について,各々両群間で統計処理を行い比較した。
【結果】 A群は14例,平均年齢65.6±7.9歳,男性12例,女性2例,B群は17例,平均年齢69.0±8.4歳 ,男性12例,女性5例であった。 リハ開始から装具処方までの期間はA群42.1±38.5日,B群22.2±17.0日で,B群が有意に期間の短縮を認めた。 AFOへカットダウンが可能であった症例はA群14例中4例,B群17例中13例であり,B群で有意にカットダウン可能な症例数が増加していた。カットダウンまでの期間はA群12.3±7.7日,B群22.2±12.9日で有意差を認めなかった。
【考察】 平成16年を境として,リハ開始から装具処方までの期間に短縮を認め,当院の装具研修が装具療法におけるPTの役割や重要性を認識し,患者の適応決定プロセスへ影響を与えたと考えられる。また,装具療法に取り組む意識と姿勢に変化を及ぼし,カットダウン可能な症例数も増加したと考えられる。これらのことから,当院における装具研修は意義のあるものであり,今後も継続すべきであると考えられる。 しかし,リハ開始から装具処方までの期間には諸家の報告と比較すると依然遅延傾向にあり,より早期に装具療法を展開する必要性がある。また,カットダウンまでの期間に有意差を認めず,より適切な装具療法の実施における知識と技術の必要性が示唆され,これらの点が今後の課題の一つであり責務であると考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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