関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 84
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骨・関節系
悪性関節リウマチに生じた両側膝蓋腱断裂に対する理学療法
*雨宮 千明小関 しのぶ秋澤 理香神元 将志大熊 正彦古川 俊明
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抄録
【はじめに】膝蓋腱断裂の報告の多くは基礎疾患をもたず術後良好な経過をたどる例が多いが,基礎疾患をもつ症例の報告は少ない.今回,悪性関節リウマチ(以下MRA)患者に生じた両側膝蓋腱断裂のPTを経験した.MRAの病態やステロイド服用により,機能回復に時間を要し治療に難渋した症例であったためPT経過について報告する.
【症例紹介及び現病歴】 症例,58歳,男性.既往歴,MRA(20年前に診断),膝関節の滑膜炎は認めず.2004年よりプレドニン内服開始し翌年,約1ヶ月間ステロイド投与目的で入院.退院後内服へ移行し,社会復帰した.現病歴,2005年8月1日,野球中走行しようとし両膝が崩れ歩行困難となり当院入院となる.X線所見にて,膝蓋骨靱帯比(以下Lt/Lp比)右側2.09左側2.19と膝蓋骨高位を,MRI所見では両側膝蓋腱に完全断裂を認め,腱の脆弱化,菲薄化は著明であった.
【経過】2005年8月15日,両側人工靭帯移植術(Leeds‐keio靭帯)を施行.PTでは,術後2日目より下肢伸展挙上,patella settingなどの筋力増強訓練を開始.術後7日目より膝関節0°~45°の範囲でROMex,1/3部分荷重を開始.術後50日,両側膝装具を着用しT字杖使用にて自宅退院となった.しかし膝伸展不全が両側残存し,歩行時の膝関節は完全伸展位,階段は二足一段での昇降であった.その後外来にてPT継続するも,右側人工靭帯固定部の緩みによる膝蓋骨高位(Lt/Lp比, 2.00)を認め,膝伸展不全-35°と筋力の回復の停滞を認めた. 2006年4月17日右側人工靭帯再々建術を施行.術後6ヶ月,Lt/Lp比は左右共に1.00,膝伸展不全は-10°残存,両側膝ROMは0~135°,膝伸展位での歩行は改善し一足一段での階段昇降が可能となった.
【考察】膝蓋腱は強靱な靱帯組織であり受傷は極めて少ない.本症例は,受傷時に腱の脆弱化,菲薄化を認め,膝蓋腱の断裂はMRA及びステロイドによる筋組織の蛋白質過剰分解等が起因していると考えられた.そのため術後の筋力の回復に時間を要し,膝伸展不全が残存したと思われた.人工靭帯移植術は自家腱を用いた再建法より強固な固定が得られ,術後早期より積極的なPTが可能であると言われているが,今回の症例は筋腱の脆弱化,菲薄化や膝屈曲運動により人工靱帯固定部の緩みを生じた.そのため,再手術後は積極的な膝屈曲運動は控え,スクワット等の膝関節へ過負荷となるような運動やしゃがみ動作及び正座などを避けるADL指導を行った.その結果,再手術後は人工靱帯の緩みなく筋力向上しADL改善につながった.人工靱帯移植術後,基礎疾患をもつ症例の場合は訓練を慎重に進め,適切なADL指導が必要であると思われた.
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© 2007 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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