抄録
【目的】
脊椎圧迫骨折症例における骨折部位と円背が疼痛,ADL
及び入院期間に与える影響を調査し,関連について検討し
た.考察を加え報告する.
【方法】
対象は神経症状のない脊椎圧迫骨折患者45例(平均年齢
81.3±5.8歳)とした.骨折部位により胸椎群20例,腰椎群25
例に分類し,カルテより調査した年齢,PT開始時・退院時の
Barthel Index(以下,BI),PT開始時・移動能力獲得時・退
院時のVAS,移動能力獲得に要した期間,入院期間について
比較検討した.さらに,脊椎X線撮影より胸椎後弯角を計測
し,50°未満を非円背,50°以上を円背とし,胸椎群-非円背13
例,胸椎群-円背7例,腰椎群-非円背19例,腰椎群-円背6例
に分類,群内で上記調査項目について同様に比較検討した.
統計はt検定を用い,有意水準は5%とした.尚,本研究は当
院の倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】
胸椎群と腰椎群の比較では,腰椎群で移動能力獲得時,退
院時のVASが高く,移動能力獲得に要した期間が長かった.
年齢,BI,PT開始時のVAS,入院期間においては差がなか
った.円背の有無による比較では,胸椎群内においては全て
の項目で差がなく,腰椎群内においては,腰椎群-円背で年齢
が高く,退院時BI が低値で,移動能力獲得に要した期間が
長かった.PT開始時のBI,PT開始時・移動能力獲得時・退
院時のVAS,入院期間には差がなかった.
【考察】
胸椎群よりも腰椎群で疼痛が強く,移動獲得に期間を要す
ことから,骨折部位による影響が示唆された.円背の有無で
は,腰椎群-円背がより高齢で,移動能力獲得にもより期間
を要し,ADLが低いまま退院に至っていることが明らかにな
った.円背を有する高齢腰椎圧迫骨折症例に理学療法を実施
する際は,入院期間中に十分ADLが改善しない可能性に留意
し,早期よりADLの向上を図る必要があると考えられた.