抄録
【目的】
胸郭は、呼吸器疾患を有する者の病理学的変化から起こる
呼吸器としての視点や身体運動をより分節的に表出させる運
動器としての役割を相互に果たすと考える。そこで、姿勢に
おける前額面の胸郭形態を評価し関係性について考察する。
【方法】
対象は脊柱に著明な変形を有さない健常成人男性38名(年
齢23.4±2.2歳、身長171.4±3.0cm、体重64.4±4.6kg)。測定
体位は正面を向き上肢は自然下垂位前腕橈骨縁を前方に向け
た背臥位、45°ファーラー位、座位とした。部位は、体幹よ
り垂直な仮想線を中心に胸骨頸切痕と胸骨剣状突起を結び胸
骨傾斜側を計測。上部肋骨は、第2肋軟骨外側端中央部の右
側を基準に仮想の平行線から左側への高低差を計測。下部肋
骨は、肋骨弓下端の右側を基準に仮想の平行線から左側への
高低差を計測。肋骨下角を剣状突起と第10肋骨を結び胸骨傾
斜角より求めた垂線とのなす角とし左右比較した。撮影は胸
部矢状径の高位に設定し1分間安静呼吸後に行った。数値算
出はImageJを用い、統計処理は各項目における左右差を比
較するため対応のあるt検定を実施。また、各姿勢3条件間の
胸郭形態を比較するため一元配置分散分析と多重比較を用い
相関分析を行った。なお有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
対象者には本研究の説明と同意を得た。
【結果】
各項目の左右差に有意差を認めた。(p<0.05)各姿勢と胸
郭位置、形態には有意差を認めなかった。(p<0.05)アライ
メントの傾向は、胸骨右傾斜。上部肋骨は右肋軟骨外側端中
央部は低位、左高位。下部肋骨は右肋骨弓下端は高位、左低
位。肋骨下角は左側角度が優位に大きかった。
【考察】
各設定条件下の胸郭形態に変化は少なく、個々の形状にお
いて項目毎に角度や高さは量的に異なるが特定の位置関係を
有する非対称性が示唆された。呼吸様式や姿勢制御の因子を
考慮し胸郭・肋骨部の位置取りを捉えたアライメント評価は
治療を行う上で一視点となると考える。