関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O-016 肺癌に対する胸腔鏡手術患者の術前身体機能と在院日数の検討
北地 郁美横田 絢香西村 潤也深水 択真西方 智大依田 万波原島 宏明砂田 雅俊伊藤 卓也小田 誠宮野 佐年
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p. 16

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抄録

【はじめに】

当院では肺癌と診断され外科的治療の適応となった患者に対して、術前より身体機能評価と呼吸訓練器具を使用した訓練を実施している。肺癌に対する手術において、術後の運動耐容能や合併症を検討した報告は多くみられるが、術前の身体機能と術後経過の関係については報告が少ない。そこで今回、胸腔鏡手術患者の術前身体機能と在院日数の関係について検討した。

【方法】

対象者は2016 年8 月から2017 年4 月に肺癌の診断にて胸腔鏡手術を施行した35 名(男性15 名、女性10 名、平均

年齢66.9 ±11.26 歳)である。対象者には研究内容を説明し同意を得た。術前に喫煙歴、MRC 息切れスケール、簡易栄養状態評価、6分間歩行テスト(6MWT)、握力、膝伸展筋力、胸郭拡張差を評価し術後在院日数との関係を検討した。統計処理にはS P S S を使用し、有意水準5%とした。

【結果】

平均在院日数は4.5 ± 2.1日であった。在院日数と相関を示したのは6MWT、握力、膝伸展筋力であり、年齢や喫煙歴とは相関を示さなかった。在院日数3 日以内の群と4 日以上の群を比較すると、術前の6MWTと膝伸展筋力に有意差が認められた。在院日数を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果、6M W T が有意な変数として抽出されオッズ比は10.02

倍であった。さらに、6M W T が5 1 5 m 以上の場合、在院日数が3 日以内である可能性は感度7 5 . 0 % 、特異度7 7 . 8 % であった。

【考察】

在院日数は社会的状況の影響を受けることも否定できないが、術前の身体機能は在院日数に影響することが示された。年齢や喫煙の有無に関わらず術前の6MWT、膝伸展筋力が在院日数に関与するという結果から、術前の生活指導や運動処方が術後の経過に良好な帰結をもたらす可能性が考えられる。今後はさらに術後の身体機能評価、呼吸機能、合併症を検討し、術前理学療法の有用性を検討していきたい。

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© 2017 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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