関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-076 腱板断裂を伴った反復性肩関節脱臼術後3 ヵ月に不安定感が出現した症例
鈴木 大古沢 俊祐吉川 恵橋川 拓史寺門 淳
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p. 176

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抄録

【はじめに】

中高齢者の肩関節前方脱臼は腱板断裂を合併する事が多く, 鏡視下にて腱板修復とBankart 修復を同時に行う術式が確立されており, 不安定感や再脱臼に対する長期の術後成績も良好であると報告されている. しかし術後早期の不安定感に関する報告は少ない. 今回術後5 週以降に不安定感が出現した症例に対する理学療法について報告する. なお本報告について患者に十分に説明し同意を得た.

【症例紹介】

62 歳, 女性. 主婦. 平成24 年転倒により右肩関節脱臼を受傷. 平成27 年再び転倒し右肩関節再脱臼と腱板断裂を受傷. 平成28 年5 月他院にて手術施行. 術前の主訴は拭き掃除におけるリーチ動作時の不安定感でありApprehension sigh は陽性であった.

【画像所見】

MRI にて棘上筋, 棘下筋の広範囲断裂と診断されBankart Lesion を認めた. またCT 所見にて前下方の関節窩骨折と診断.

【手術所見】

ブリッジング法にて断裂腱の修復を行い, 同時に関節包の修復を行った.

【理学所見】

術後は3 週で外転固定装具Off, 術後5 週で自動運動開始となった. 術後5 週以降疼痛は軽減し家事動作も徐々に可能となるが, 術後3 ヶ月で術前同様に拭き掃除におけるリーチ動作時の不安定感が出現した.Apprehension sigh は陽性であり腱板筋力は各方向で低下を認めたが, 肩甲骨位置の補正にて筋力の向上がみられた. 術後6 ヶ月では不安定感は消失し,Apprehension sigh は陰性となった.

【考察】

術後5 週以降に出現した不安定感の要因として, 安静時肩甲帯Alignment 異常によりリーチ動作時における肩甲骨と上腕骨頭が求心位に保たれていない事と考えた. 理学療法介入では上腕骨頭に対する肩甲骨の求心位の獲得を目的に閉鎖位の運動療法を行った結果, 術後6 ヶ月では不安定感は消失した. 術後3 ヵ月で生じた不安定感に対する理学療法では, 肩甲骨と上腕骨の位置関係を考慮し, 閉鎖位の運動を用い肩甲帯を中心とした機能を賦活化させ, 逸脱した運動様式の修正を図ることが重要であると考える.

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© 2017 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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