主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 192
【目的】
繰り返しの投球により肩関節内外旋筋力や筋力比の低下を認めることは先行研究にて報告された.BIODEX の可動域とその結果を分けて研究したものは少なく, 障害が生じやすい可動域は明らかにされていない. そこで, 本研究は内外旋の総関節可動域を120°と設定, 分析角度は4 群に分け, 投球数増加による筋力及び筋力比の傾向について探究した.
【方法】
対象は研究の説明を受け同意した健常男子6 名( 年齢19.5 ± 0.5 歳) とし, 内容は群馬医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得た.20 球×5 回の投球を行い, 投球前,20 球毎( 計6 回)にBIODEX(180deg/sec)を使用し肩関節2nd position にて測定. 解析は,4 群(0 ~30°,31 ~60°,61 ~90°,91 ~120°) における投球前に対して各投球数後の最大内外旋筋力および筋力比に対応のあるt 検定を行う.
【結果】
各投球数での最大筋力は外旋31 ~60°, 内旋0 ~30°内にて認め, 投球数増加に伴い内外旋筋力比は低下傾向を示した. 外旋筋力については投球前に対して80 球後,100 球後の外旋0 ~30°内にて有意差(p <0.05) を認めた.
【考察】
投球数増加によって外旋筋力は低下し, それに伴い内外旋筋力比の減少傾向も認めた. 要因として, 加速期で生じる急速な上肢の内旋運動を減速期にて外旋筋が制動作用として機能していることが考えられ, より強い収縮を必要とし, 繰り返し投球動作を行った結果, 外旋筋の筋疲労が内外旋筋力比の減少に繋がったと考える. 内外旋筋力比は65% 以下で投球障害を引き起こしやすいと言われ, 本研究結果において0 ~30°で投球前(54.4%) より低値を認め,100 球後(35.4%) も4 群内を比較すると最も低値を示した. このことから, 投球数増加に伴い上記可動域内にて障害発生リスクの要因となる可能性の1 つとして示唆された.
【研究課題】
本研究はBIODEX を用いた二次元の計測のため, 投球に近似した動作で計測する必要がある. 今後はより実践に近い環境での測定が必要である.