主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 195
【目的】
現在,体幹筋持久力評価として用いられている伊藤テストは,高い規準妥当性が示されているうえ簡便であり,臨床現場等で幅広い対象者に適用されている.しかし,脊椎後弯変形が著明な方や,痛みなどにより身体機能が低下している方には実施が困難であることが多い.そこで本研究では,独自の体幹筋持久力評価(以下,新テスト)を考案し,従来の伊藤テストと比較し,各テストの特徴や対象者を明確にすることを目的とした.
【方法】
対象者は,過去1 年以内に腰痛症状のない健常な男女13 名(男8 名,女5 名,平均年齢20 ± 3 歳)とした.全対象者には研究内容の説明を行い,書面で研究への参加の同意をしてもらった上で実施した.同一の対象者に対して,新テストと伊藤テストをランダムに実施させ,その差を比較・検討した.測定時間は,胸骨部位がベッドから離床し再び着床するまでとした.脊柱アライメントは,脊柱計測分析器Spinal Mouse を用いて測定を行った.各テストの実施肢位にて,それぞれ腰椎前弯角度,胸椎後弯角度,仙骨傾斜角度を測定した.腰背部筋は超音波診断装置を用い,第5 腰椎棘突起部位にて,各テスト実施前の安静時および実施時の多裂筋及び最長筋の筋厚の測定を行い,その差を比較した.
【結果】
テスト実施時の脊柱アライメントにおいては,腰椎前弯角度および仙骨傾斜角度において有意な差を示した.各テストにおける安静時およびテスト実施時の脊椎弯曲の変化量においては、腰椎前弯角度のみに有意な差を示した.筋収縮時の筋厚および腰背部持久力時間においても有意な差を示した.
【結論】
本研究の結果より新テストは,脊椎後弯変形が著明もしくは痛みなどで身体機能が低下している対象者への体幹筋持久力評価としてより適切に実施可能である事が示唆され,一方伊藤テストは,わずかな脊椎後弯変形,若年層,アスリートへの体幹筋持久力評価としてより適していることが示唆された.