主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 202
【背景】
静脈血栓塞栓症の理学的予防法の1 つとして足関節自動運動の下肢静脈血流増加効果が報告されている.しかし下腿三頭筋の柔軟性が下腿筋ポンプ作用に影響するかは不明である.また全身振動による筋柔軟性の向上が報告されている.そこで本研究では全身振動による下腿三頭筋の柔軟性向上が足関節自動運動時の下肢静脈血流促進効果を増加させるかを検証した.
【方法】
対象は健常成人男女各10 名の計20 名とした.各条件の開始前に10 分間の安静を設けた.背臥位で下肢静脈最大血流速度および下腿三頭筋ストレッチ前の足関節自動背屈ROM( 膝関節伸展位) を測定し,足関節自動運動実施中の血流測定を行った.次に下腿三頭筋ストレッチを (1) ストレッチボード使用下または (2) 全身振動下でのストレッチのいずれかの条件で行った後ROM を測定し,足関節自動運動実施中の血流測定を行った.続いてもう一方の条件も同様に行った.ストレッチ条件間での最大血流速度および足関節背屈ROM の比較には,反復測定の一元配置分散分析ならびにBonferroni の多重比較検定を用いた.全身振動はPOWER PLATE pro7 Ⓡ( 株式会社プロティアジャパン) を利用した.本研究は施設内の研究倫理審査委員会の承認を得て行った.
【結果】
足関節ROM はストレッチボード使用下に比較し全身振動下で有意に拡大したが,下肢静脈最大血流速度の有意な変化は見られなかった.
【考察】
本研究ではストレッチを背臥位・膝関節伸展位で行ったため,ヒラメ筋内静脈の血液容量増大に有効でなかったと考えられた.したがって,筋柔軟性と筋ポンプ作用の関係をより正確に検討するためには,対象のヒラメ筋の柔軟性の測定方法および介入方法を再考する必要がある.
【謝辞】
本研究はJSPS 科研費JP17K10940 の助成を受けたものである.