主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【はじめに】
訪問リハビリは心身機能、活動、参加の要素にバランスよく働きかける効果的なサービス提供を推進するための理念が明確化されている。そこで、興味・関心チェックシート、訪問リハビリ計画書を有効に活用し、社会参加への取り組みを行った事例を経験したので、その成果を報告する。
【倫理的配慮】
本症例は利用者様、家族の了承を得ており、個人情報に十分配慮した上で行った。
【症例紹介】
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)にて自宅療養している50 歳代男性。人工呼吸器を装着しており、基本動作、ADL 全介助レベル。気力低下、意欲低下が著しく、世間体を気にし、世間とのかかわりもほとんどない状態である。
【経過と結果】
興味・関心チェックシートを用いて調査を行った。ここで、三女の大学の入学式に出席してみたいという意向が聞かれる。
その内容をケアマネージャーに相談し、在宅サービス担当者の協力を得ることにした。また、当日までの流れを明確にするため、訪問リハビリ計画書を用いてその内容を目標とし、達成期限、リハビリの内容、提供時間、頻度を明確にした。その計画に基づきサービス提供を行った。この結果、家族の介助にて入学式に参加することができた。その後、主治医からの勧めもあり、ALS 協会の運営にも携わるようになった。
【考察】
ALS 療養者の社会参加を促すためには、本人の意向の確認、それを実現するための調整作業、社会参加のための場面、機会の整備が必要であると言われている。これらを第三者がマネージメントを行うシステムとして興味・関心チェックシート、訪問リハビリテ計画書の活用が有効であると考える。人はその人にとって大切な生活行為を遂行することで、満足感や充実感を得て健康であることを実感し、幸せであると実感する。また、自分が社会で受け入れられたという安心感を得たことで生きがいや新たな役割の構築に至ったと考えられる。