主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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【目的】
Hand Held Dynamometer(HHD) は,広く臨床の場で活用されており,定量的な筋力評価指標として知られている.その計測誤差を知ることは,患者の変化をとらえ治療効果を判定することにおいて重要である.本研究の目的は,HHD を用いた下肢筋力測定の測定限界を明らかにするため,検者内及び検者間に生じうる誤差の量を算出することとした.
【方法】
対象は,健常成人1 6 名( 年齢2 6 . 8 ± 5 . 7 ,男性1 0 名,女性6 名) ,32 脚とした.下肢筋力の検査項目は,股関節屈曲・伸展・外転・内転,膝関節伸展筋力とした.HHD(ミュータス F-1,アニマ社)を用い,最大随意収縮時の筋力を測定した.検者内信頼性の検証のため同一検者が各検査を3回ずつ施行した.検者間信頼性の検証のため2人の検者が同一項目を計測した.信頼性の評価のため級内相関係数(ICC(1,1),ICC(2,1))を算出した.さらに,測定限界の評価のため最小可検変化量(MDC)と,測定値に対する誤差の割合を示すため%MDC(100×MDC/ 平均測定値)を算出した.本研究は,研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
級内相関係数は,ICC(1,1) で0.88 ~0. 96(P <0.01),ICC(2,1) で0.74 ~0.94(P <0.01)であった.股関節屈曲・伸展・外転・内転・膝関節伸展の検者内計測誤差は, MDC で6.5,2.8,5.5,5.6,7.7kgf,%MDC で25.1,18.9,23.4,
34.6,21.6%であった.検者間計測誤差は,MDC で6.6,3.7,9.1,7.6,8.6kgf,%MDC で26.2,25.5,38.8,46.4,
23.5%であった.【考察】
筋力検査は,検者内・検者間においても誤差量を考慮すると,少なくとも3kg 以上の変化をもって患者の変化ととらえるべきである.また,各測定部位で測定値に対する誤差量は,19 ~49%と幅広く,HHD を用いた筋力評価の測定限界に十分注意して使用するべきである.