関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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P-239 歩行獲得に向けて積極的に立位練習を行った症例
田中 克統吉井 亮太
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p. 339

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抄録

【はじめに】

脳卒中症例では, 皮質網様体路の障害により非麻痺側股関節を中心とした予測的姿勢制御が困難となる. また, 立位の姿勢制御には視覚, 体性感覚, 前庭入力が重要とされている. 今回, 視覚・体性感覚入力を利用した立位練習を実施し歩行を獲得した症例を経験したので報告する.

【症例紹介】

60 代女性. 左後頭葉の脳出血で入院. 既往歴にクモ膜下出血, 脳梗塞を発症しており, 左右の前頭葉に病巣あり. 病前のADL

は車椅子を使用し自宅内ADL 自立. 本報告はヘルシンキ宣言に基づき主旨を説明し同意を得た.

【理学療法評価】

Brunnstrom recovery stage 右上肢V・手指V・下肢V, 左上肢IV・手指V・下肢III. 表在感覚は軽度鈍麻. 立位保持はつかまり立ちで見守り, 両股関節, 左足関節に疼痛あり. 身体図式の歪みがあり, 動作全般で過剰な身体固定が見られ下肢でのpushing を認めた. 歩行は両手すり把持で最小介助にて実施可能. 高次脳機能障害は分配性注意障害, 抑制低下を認めた.

【方法】

KAFO を使用し膝関節伸展を補助. 平行棒内にて前方に鏡を置き右上肢はon elbow, 左上肢はon hand とし, 視覚と体性感覚情報による姿勢の修正ができるように設定. 介入では, 正中位の保持を促した後, 右側への重心移動, リーチ動作等, 動的立位課題を実施. 介入後, 固定型pick up walker とAFO を使用した歩行を行い, 治療効果を判定.

【結果】

入院当初より立位・歩行時の恐怖心が軽減. 右下肢での荷重が可能となり右立脚期間が延長. 左下肢の歩幅の拡大が見られた. 退院時には固定型pick up walker とAFO を使用し見守りにて歩行可能.

【考察】

平行棒内で鏡を利用し体性感覚, 視覚によるフィードバックを与えた立位練習を実施. 両上肢に支持物を与えることによる上下肢からの体性感覚と鏡による視覚情報を利用することで適切な難易度を設定できたと考える. 右上肢をon elbow にすることで上肢のpushing を抑制し, 体幹・下肢の近位筋による姿勢制御が可能となったと考える.

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© 2017 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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