主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
p. 36
【はじめに】
我々は現在までに, 変形性膝関節症( 以下膝OA) 患者に対し,5 ヶ月間の包括的な外来理学療法による筋力増強効果について報告した( 橋口ら;2017).そこで本研究は, さらに期間を延長し12ヶ月間の包括的な外来理学療法による大腿四頭筋筋力の経時的変化について検討した.
【方法】
対象は, 膝OA と診断された15 名( 平均年齢77(70-86) 歳) の30 脚であった. 両膝に症状を有する場合, 疼痛が弱い方を健側, 疼痛が強い方を患側と定義した. 方法は, 理学療法開始時( 以下0M) から理学療法12ヶ月後( 以下12M)まで2ヶ月毎に両側の大腿四頭筋筋力値(kg, 以下筋力値) を測定した. 測定には, 徒手筋力計( μTasF-100, アニマ社製) を用いて3 回測定し,平均値を採用した. 訓練内容は, 関節可動域や筋力増強訓練, 自主トレーニング指導など包括的なものであった. 統計学的検討は, 各期間に測定を行った健側及び患側の筋力値の差及び経時的変化について二元配置分散分析で検定後, 多重比較法を用いて検討した. 統計ソフトはJSTAT を用い, 有意水準は5% 未満とした.
【説明と同意】
本研究は症例に治療計画を十分に説明し, 書面にて同意を得て実施した.
【結果】
健側及び患側筋力値の差に主効果を認めず, 経時的変化に主効果を認め, 交互作用は認めなかった. 健側及び患側とも0M と比較し,4 ヶ月後( 以下4 M ) 以降で筋力値が有意に増加した( p <0.05 ). また, 患側は2 ヵ月後( 以下2 M ) と比較し,6 ヶ月後以降,4 M
と比較し,12M で筋力値が有意に増加した(p <0.05). 健側では,2M と比較し,8 ヵ月後以降,4M と比較し,12M で筋力値が有意に増加した(p <0.05).
【考察】
本研究の結果から, 膝OA に対する筋力増強には, 外来理学療法及び自主トレーニングを継続的に行う必要があることが示唆された.本研究の結果は,定期的な筋力評価が運動への動機付けとなり,目標値を設定することで,運動習慣の獲得に繋がったと考えられる. 今後は, 膝OA に対する筋力増強に, より効果的な介入方法などを検討していく必要がある.