関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P4-1-2
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一般演題
足底部の硬度/材質識別課題練習を実施し,歩行中のふらつきが軽減した重度感覚障害を抱えた視床出血の一例
*芝 優子杉崎 彰添田 遼
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抄録
【はじめに,目的】 重度感覚障害に対しての足底部の硬度/材質識別課題が,感覚機 能や歩行への影響を明らかにすること. 【症例紹介,評価,リーズニング】 60歳代の男性.左視床出血発症後,第16病日に当院回復期リ ハビリテーション病棟に入院.入院時評価(第16 ~ 19病日)で は下肢Brunstrom Recovery Stage(BRS)Ⅵ,Functional Balance Scale(FBS)51点であり,病棟内はフリーハンド歩行で 自立していた.10点法での感覚機能評価は,触覚は下腿:3点,他 部位:0点,下腿:0 ~ 3点,痛覚は大腿:0 ~ 1点,足底:0点,足 背:2点,下腿:0 ~ 3点で右上下肢の感覚は重度鈍麻であった.タ オルと芝生マットを使用した材質の異なる物品の識別課題は5回中 3回正答,閉眼立位での一側下肢最大荷重率(荷重kg/体重kg)は 右0.87,左0.93であった.歩行は開眼と比較して閉眼条件では右 股関節内転位で踵接地するため右側へのふらつきと転倒リスクを 有した.感覚障害に起因して主に歩行時に転倒リスクがあり,退 院後の生活を見据えて感覚障害およびバランス障害への介入を検 討した. 【倫理的配慮,説明と同意】 当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得た. 【介入内容と結果】 第19病日からの10日間,1日40分×2回の理学療法を週7日実施し た.介入内容は,表在感覚の促通を目的に硬度や材質の異なる物 品を識別する表在感覚促通練習,荷重感覚の促通を目的に体重計 で指定したメモリに合わせてもらう荷重感覚練習,足底感覚の促 通を目的に日常生活で使用する物品を足底で当ててもらう足底感 覚練習を実施した.これらは,視覚で確認を利用しながら難易度を 調整した.介入後(第29病日)の評価では,触覚は足底:0~3点, 足背・下腿:1点,大腿:1~3点,痛覚は足底:0~1点,足背:1点, 下腿:1~3点,大腿:1~2点であり,物品の識別課題では誤りがな くなった.閉眼立位での一側下肢最大荷重率は左右ともに0.93と なった.FBSは56点になり,閉眼条件での歩行では右股関節内転 接地は軽減し,ふらつきに対する介助は不要となった. 靴を履いた ままベッドにあがる行為も軽減した. 【考察】 難易度を調整しながら感覚促通練習を実施したことで,表在感覚 が改善したと考える.表在感覚が改善したことで,閉眼歩行での 右股関節内転接地が改善し,歩行中のふらつき軽減につながった と考える.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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