関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P4-2-3
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一般演題
スリングエクササイズを用いた素早い体幹側屈運動が高齢者のバランスと歩行能力に与える即時効果の検証
*滝田 美奈子小野塚 雄一
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抄録
【目的】 近年,素早く体幹を左右に側屈運動させるArm Crossed Seated Side Tapping(以下,AC-SST)は歩行速度の向上に貢献する.高 齢者は体幹の重量に課題があり,スリングを用いることで,上肢を 免荷した状態で運動の方向を規定できる.本研究の目的は,高齢 者におけるスリングを用いたAC-SSTがバランスと歩行能力へ与え る即時効果を検証すること. 【方法】 対象は単一デイサービスの利用者のうち,杖歩行・独歩自立した 40名(平均年齢83.2歳,男性14名,女性26名)をブロックランダ ム化法により,スリング群(n=20)とコントロール群(n=20)に分 けた.方法は端座位で腕組みをして,両上腕外側10cmの目標物 に対し2セット(10往復・1セット)を実施した.スリング群のみスリ ングを装着した.介入前後で8m最大歩行速度(以下,8mMax), Timed Up & Go Test( 以下,TUG), 開眼片脚立位( 以下, OLS),Functional Reach(以下,FR),長座位前屈を測定した. 統計学的解析は,群内比較にウィルコクスンの符号付順位検定, 群間比較にマンホイットニーのU検定を用いた.統計解析ソフトは EZRを用い,有意水準は5%とした. 【倫理的配慮,説明と同意】 日本理学療法学会連合倫理審査委員会(R05-001)にて承認を得 た. 【結果】 スリング群はAC-SST前後で8mMax,FR,長座位前屈が有意に 増加し,歩数が有意に減少した.コントロール群はAC-SST前後 で8mMax,FRが有意に増加し,TUGが有意に減少した.2群間 の比較において有意差は認められなかった. 【考察】 高齢者をスリング有無で2群に分け,AC-SSTを実施し,村上らの 先行研究と同様に両群とも歩行能力が即時的に向上した.両群で 8mMaxの変化量に有意差はなく,歩行能力に対する効果は同等 だった.スリング群でFR,長座位前屈にも効果があることが明ら かになり,スリングの免荷作用によりグローバルマッスルの緊張を 抑制しながら,椎間関節運動が行われ,体幹の柔軟性が向上し, リーチ距離が延長したと考える.またコントロール群でTUGに効 果があり,体幹免荷をしない条件がグローバルマッスルを賦活さ せ,粗大動作が向上したと考える.研究の限界として筋活動まで 評価が行えていないため,今後は筋活動との関連を明らかにする 必要がある.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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