関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P8-6-3
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一般演題
ボツリヌス毒素療法の効果を慣性式モーションキャプチャにて歩行解析した中枢神経系悪性リンパ腫の一例
*岡本 拓真黒岩 良太天田 裕子森田 光生諸岡 茉里恵松谷 智郎村田 淳
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抄録
【はじめに,目的】 ボツリヌス毒素療法(BTX)は,局所の痙縮に対する治療として広 く使用されている.BTXの効果は投与後1週以内で出現すると言 われているが,実際に動作がどのように変化したかの報告はまだ 少ない.今回,慣性式モーションキャプチャシステムを使用し, BTX前後の痙縮を伴う歩行を経時的に評価したため報告する. 【症例紹介,評価,リーズニング】 症例は,中枢神経系悪性リンパ腫の26歳男性.BTX施行前の動 作能力は,屋外独歩自立で理学療法士として一部業務のサポート を受けながら就労は可能であるが,左下肢優位の痙縮による跛行 があった.左下肢筋力はMMT 5であるが,modified Ashworth scale(mAS)は左下肢で膝関節屈伸・足関節背屈は2,その他は 1であり,歩容は左立脚初期に膝屈曲位で踵接地せず,推進力を 代償するために右立脚中期から足底屈位となることから,左側の 腓腹筋と膝周囲筋の痙縮による歩行障害と考えられた. 【倫理的配慮,説明と同意】 本例には目的,得られた情報の利用について十分な説明を受け, 同意を得た. 【介入内容と結果】 介入内容は,BTX type Aで総用量120単位(各37.5単位×2:左 腹筋筋外側頭,25単位:左腓腹筋内側頭,20単位:左内側ハム ストリング)を脳神経内科医師より注射した後,同筋のセルフスト レッチを30秒間,3回を日中は2時間毎に実施した. 評価方法は,慣性式モーションキャプチャシステムe-skin MEVA (Xenoma)を使用し10m歩行テストを快適速度で記録した.歩行 解析パラメータは,歩行周期における膝・足関節の最大角,側方 方向への骨盤中心,その平均値を算出した.また,安静時の痙縮 評価としてmASを実施し,これらの評価を投与前,1週後,2週後, 3週後でそれぞれ評価した. 結果は,BT X前,1週後,2週後,3週後において,m ASは, 膝伸展・足背屈共に2→2→1+→1+で,10 m歩行テストは, 9.32/19→7.91/16→6.81/16→6.87/16(秒/歩)あった.歩行解 析パラメータは,最大足背屈角(°):(左)15.6→13.7→23.3→18.3, (右)- 4.7→ - 8 .7→ 0.3→8 .9,最大膝伸展角:(左)0. 2→ - 2.8→-1.7→4.7,(右)6.0→8.5→5.3→6.7,骨盤中心(cm)は 7.92→2.68→2.52→1.42と右側から正中位へ移動した. 【考察】 mASではBTX 2週後より変化を認めたが,歩行テストでは1w後 から変化があり,BTXの効果判定には動作評価が検知しやすかっ た.また,歩行解析の結果から,BTX施行側のみならず,反対側 や骨盤の偏位にも着目する必要があると考える.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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