抄録
【はじめに,目的】
2015年より当院ではAmerican Heart Association(以下,AHA)
Basic Life Support(以下,BLS)インストラクターを育成しており,
院内での蘇生教育の一環を担う活動を行っている.AHAは『AHA
心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインGuidelines for
Cardiopulmonary Resuscitation(以下,CPR)and Emergency
Cardiovascular Careを公開しており,これは,米国や世界中の
医療従事者,会社,および病院で使用されている救命プロトコー
ルの基礎になっている.AHA BLSインストラクターは,AHAの公
認BLSトレーニングカリキュラムのすべてを指導し,プロバイダー
カード(コース修了証)を発行できるAHA公認資格である.当院では
100名のリハスタッフに対し21名のAHA BLSインストラクターが居
り,日々臨床業務にあたっている.BLSインストラクターとなること
が,日々の業務にどう生かすことができているのか調査をしたため,
報告する.
【方法】
対象者:BLSインストラクター 21名(理学療法士20名,作業療
法士1名)
方法:無記名アンケート方法
【説明と同意】
対象者にこの研究目的や内容の説明を行い,全てにおいて同意を
得ている.
【結果】
アンケート内容としては,AHA BLSインストラクターになって良
かったと思う事について記述式でアンケート実施.臨床場面,急
変場面,教育・指導場面,スキルアップ,その他を答えてもらう形
式とした.
臨床場面では,全員から予後予測に役に立っているとの回答があ
り,リスク管理にも自信がついたとの意見が多くみられた.急変
場面では,率先してCPRに参加出来る点や,急変場面での自分の
役割が冷静に判断出来るようになった等の意見が多かった.教育・
指導場面では,患者や後輩,学生指導時にどう声掛けをすればよ
いかが身についたという意見が多く,スキルアップにおいてもCPR
技術が身につく以外に指導方法が身につく事やリスク管理に役に
立っているという意見が多くみられた.
【考察】
アンケート結果から,BLSインストラクターを通じて急変場面のみ
ならず,臨床場面や教育・指導場面においても有用な技術・知識
への自信が身につく可能性がある事が示唆された.今回のアンケー
トはAHA BLSインストラクターのみ聴取したため,今後はインス
トラクターを取得していないスタッフからの意見も集め比較する事
で,プロバイダーとして活動する事による効能について検討を重ね
ていきたい.