公共政策研究
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特集 公共政策と行政管理:政策論と管理論の交錯
「基本方針による管理」と計画化:総合戦略と総合計画を事例に
松井 望
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2017 年 17 巻 p. 40-51

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抄録

本稿では,行政管理の機能一つである計画化(Planning)を対象に,近年の日本の自治体における計画行政の特性を分析する。

近年,従来の行政計画とは異なる計画化の形式が用いられ始めている。それは基本方針である。基本方針は,明確な定義や機能が定められてはいない。そして,その形態も様々である。しかし,国,地方のいずれにおいても将来に向けた政策の基本的方向付けることを目的に策定する傾向がある。特に,法律名に「推進」または「促進」の用語を用いた法律では,国は基本方針を策定し,自治体側には基本計画等の下位計画の策定を求める規定を置くことがある。そして,総じて,基本方針では対象となる主体に「自主的取組みを促進させることで行政目的の推進」を図る点で共通している。これを本稿では「基本方針による管理」と呼ぶ。

地方分権改革が進められたことを背景に,現代では,国からは自治体に対して計画化を強いることは,制度上は困難である。そのため,対象となる自治体側では,計画の策定と内容面の判断に自由度が高くなる。つまり,自治体には計画を策定する自由がある一方,策定しない自由をもつ。しかしながら,現状では,国が定める基本方針のもと,ほぼ全ての自治体が計画化を進めている。それはなぜか。この問いには,自治体が国からの計画化の要請に対して内在的な必要性から説明がなされてきた。しかし,必要性からの説明以外にも,自治体側に対して,国は強制をしていないものの国の方針通りに対応するように促す,国による管理のメカニズムがあるとの説明がある。

それでは,実際は,どのように自治体は対応してきたのだろうか。本稿では,国による基本方針を通じた自治体に対する管理への自治体の対応を分析する。具体的な対象は,「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2014年12月27日)に基づき,自治体が任意に策定することが求められた「地方総合戦略」である。以上の考察を通じて,自治体では,外形的には国による管理メカニズムのもとで総合戦略を策定しつつも,内容面では,自治体が策定してきた既存の政策体系を継承しながら総合戦略の策定に対応する姿を明らかにする。

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