2013 年 43 巻 1 号 p. 143-151
多くのシステムや製品が高度化する中で,それを実現するメーカにおける業務プロセスの品質を確保することが重要となっている.日立では, ISO9001などを参考に,各事業部門の業務プロセスとその実行度合いを評価する「品質経営評価技法」を開発・実践してきたが,開発・生産しているシステムの不具合撲滅には至らなかった.本論文では「品質経営評価技法」などの業務プロセス評価において,不具合情報を活用して質問を設定する手順を提案する.この手順は,人の不適切な行動のタイプによって必要な対策が異なること,事業部門ごとに不具合の技術的な内容が異なることに配慮したものである.提案する手順を社会インフラ事業部門の1つの開発プロジェクトに適用した結果,不具合情報を反映した質問を用いることで,従来の品質経営評価技法と比較して,業務プロセスの評価における指摘事項の件数,指摘事項に基づいてFMEA・設計資料において気付くことのできる不具合の件数が大幅に増えることが分かった.