抄録
本論文では,Xを説明変数としYを目的変数とする線形回帰分析のフレームワークにおいて,Zを説明変数として追加することによってXからYへの標準偏回帰係数の値が1 を超える統計的現象に注目する.統計的観点から,この現象を引き起こす状況を明らかにするために,(1)XとZの相関係数の大きさ,(2)単回帰モデルと平均に対する因果効果とのなす角,のそれぞれに焦点をあてる.そのうえで,「Zを追加することによってX からY への回帰係数
の値がどのくらい変化しうるのか」について考察する.この現象について,既存研究では,Zを追加することによってXからYへの標準偏回帰係数の値が1を超える原因の一つとして,多重共線性の存在がしばしば指摘されている.これに対して本論文では,(i)説明変数どうしが無相関でない限りこの現象が起こりうること,(ii)標準偏回帰係数がとりうる値の範囲は(-∞,∞)であることを指摘する.