2019 年 68 巻 6 号 p. 355-359
低LETの放射線治療(X線治療,陽子線治療)では,照射野内での線質の変化は臨床上無視できるほど小さく,治療効果は吸収線量に基づいて経験的に予測されていた。高LETである炭素線を用いた治療の場合,照射野内で特に深さとともに線質は著しく変化し,これに伴って治療効果(RBE)にも大きな変化をもたらす。このことから,従来とは違った治療モデルが不可欠となった。日本における炭素線治療の始まりについて述べ,スキャニングへの移行,microdosimetryの手法を取り入れた高度なモデルの開発,また検出器についての開発について説明する。