2020 年 69 巻 8 号 p. 277-286
電子と同じ電荷を持ち,およそ207倍の質量を持つ素粒子である負ミュオンは,電子と同じように原子軌道を作り,ミュオン原子を形成する。ミュオン原子軌道は原子核に極めて近いにもかかわらず,ミュオンが捕獲されミュオン原子が形成する過程において,化学的な影響,すなわち最外殻電子の影響が存在することが知られている。また,ミュオン原子には通常の原子と同じように電子が存在するため,化学反応が起こりうる。本稿では,化学の観点から行われた負ミュオン研究について概観する。