1967 年 16 巻 4 号 p. 161-166
水溶性であり, かつ脂溶性でもある標識化合物を用いても, 標本中の放射性物質の位置と, 半定量的なratioとを求めることのできるmicroautoradiographyの新技術を考案し, 満足しうる成績を得た。この方法は, “dry method”とよばれるにふさわしく, 市販の原子核乾板上の乳剤膜のみを水中で剥がし, 反転してサランラップ上に一度はり付け, 自然乾燥後にサランラップごと標本にはり付け, 水蒸気を一瞬あてることによって乳剤を伸展させて, 標本に密着させる。つぎに一定期間の露出後, 乳剤に損傷などのためのfogsを与えないようにサランラップを剥がし, 常法により, 現像・停止・定着するものである。この新方法によって, 短時間露出の場合は, 従来の“wet method”と比ベてとくに計数効率が上昇するが, fogsの増加は認められなかった。また, Fuji試作乳剤ET-2Fが露出時間および標識化合物の濃度の対数と還元銀粒子数との間にlinearな関係が明確に認められるのに反して, ET-2Eについては, その関係が認めにくく, これは, 僣像退行の速度の速いためと思われる。なお本法は, 従来法では, 利用できなかった寒天ゲル電気泳動法による材料中のRIの存在位置, およびその半定量をも可能にするものである。