1993 年 42 巻 1 号 p. 43-56
高分子を自由体積によってキャラクタライズするには, フォトクロミック分光スペクトロメトリ, 蛍光プローブ法, 光異性体反応法, スピンラベル法などの計測法が提案されているが, いずれも試薬を試料に導入するため, 試料の状態が変化してしまい, 得られる情報の確実性に疑問が多い。o-Psを利用した陽電子消滅法は, 試料を非破壊のまま高分子の自由体積の大きさ, 分布, 形状, 密度に関わる情報を与えてくれる。
また, 高分子計測に適する二次元ACAR, 単色低速陽電子ビームなどの進歩により, 高分子薄膜の深さ方向の情報も直接得られるようになった。自由体積既知の標準試料の探索により, 陽電子計測データの規格化, データ解析の標準化, 結果の解釈の一義性などの進展をまって, 陽電子消滅法による高分子の自由体積測定の定量化が期待される。