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高地チベット民家の屋内外の自然放射線 (I)
野口 邦和工藤 逸郎岡野 眞治
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1998 年 47 巻 4 号 p. 300-310

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抄録

中国チベット自治区の1軒の民家における屋内外の自然放射線の照射線量率を測定した。宇宙線線量率とγ線線量率を見る限り, 屋内線量率はそれぞれ3群に分類できた。すなわち, 第1群は2階部分, 第2群は1階入口の部屋, 第3群はその他の1階部分である。第1群の平均宇宙線線量率は4.079nC/kg/h (15.81μR/h) , 平均γ線線量率は4.515nC/kg/h (17.50μR/h) であった。一方, 第3群の平均宇宙線線量率は2.740nC/kg/h (10.62μR/h) , 平均γ線線量率は5.284nC/kg/h (20.48μR/h) であった。第3群の宇宙線線量率が第1群より低かったのは, 第3群の方が第1群より建築材料によって宇宙線が余分に遮蔽されたからだと考えることができた。第3群のγ線線量率が第1群より高かったのは, 第3群の方が第1群より大地に近いこと, および石 (1階の壁材) が土 (2階の壁材) よりも天然放射性核種の濃度が相対的に高かったからであると考えることができた。第2群は宇宙線線量率およびγ線線量率ともに第1群および第3群のほぼ中間の値であった。また, 高地チベット民家屋内外の自然放射線の空気吸収線量率を求め, 世界各国の屋内外の自然放射線の空気吸収線量率と比較した。

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