2005 年 54 巻 11 号 p. 531-540
東京都西部の奥多摩地域に流域を持つ河川水とその地域に湧出する温泉水及びこの地域を構成する岩石 (堆積岩) の228Ra/226Ra放射能比の観測を行ったところ, 河川水中の228Ra/226Ra放射能比は1.0~2.9, 温泉水では0.7~0.8, 岩石では1.2~1.7の範囲にあった。河川水中と岩石中の228Ra/226Ra放射能比の平均値はそれぞれ2.0±0.03と1.4±0.1であり, 河川水中の228Ra/226Ra放射能比は岩石中のものより高い傾向が見られた。地下深部にあって滞留時間が長いと考えられる温泉水中の228Ra/226Ra放射能比は河川水中のものより低い傾向にあった。河川水中の228Ra/226Ra放射能比は一日の降水量が20mmを超える強い降雨の後に減少する傾向がみられた。この228Ra/226Ra放射能比の減少は, 強い降雨により深部にある滞留時間の長い地下水が河川水中へ押し出された結果ではないかと考えられた。