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放射性セシウムの水田土壌への収着挙動における粘土鉱物の影響
石川 奈緒内田 滋夫田上 恵子
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2007 年 56 巻 9 号 p. 519-528

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抄録

放射性セシウム (137Cs, 半減期30年) は放射性廃棄処分や原子力事故の際の環境影響評価において重要な放射性核種である。本研究では, 日本各地から採取した30試料の水田土壌を用いて, 137Csの収着挙動に対する土壌特性の影響を検討した。各土壌試料の土壌-土壌溶液分配係数 (Kd) をバッチ収着実験から求めた。更に, 土壌へ固定される137Csの割合を得るため, 逐次抽出実験を行った。土壌特性として, pH, 陽イオン交換容量 (CEC) , 全炭素含量, 全窒素含量, 粘土含量を測定し, 更に, X線回折法を用いて, 土壌中の粘土鉱物の同定を行った。特に, Csを強く固定するイライトの含量を, 相対量として得た。
全土壌について, 137CsのKd値は269~16 637L/kg (幾何平均2286L/kg) であった。Kd値と各土壌特性との相関をSpearmanの順位相関 (相関係数Rc) を用いて解析したところ, Kd値と相関を示したものは粘土含量のみ (Rc=0.55, p<0.005) であった。一方, 土壌への137Cs固定率は粘土含量より相対イライト含量と高い相関があった (Rc=0.68, p<0.001) 。以上の結果から, 土壌への137Cs固定率の推定には粘土含量ではなくイライト含量が非常に重要であることが示唆された。

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