抄録
本稿では、茶屋の原始がどこにあるのか、そこからどのような歴史的展開過程をたどるのかということを明らかにし、庶民が喫茶文化を直接受容する場としての茶屋の役割を考察した。茶屋には、営利の茶屋「一服一銭」とともに非営利の茶屋「接待茶屋」が存在する。その「接待茶屋」は寺院社会を根源とし、法体の修行者を対象とした宗教行為である接待を行う「接待所」から発し、庶民もその対象に加えつつ「接待所」の機能のうち飲食提供機能を継承したものと、本来寺僧向けであった寺院法会の「法会内容」の「附帯部」の「饗」を参詣に集う庶民向けに提供したものがあり、双方ともに参詣文化における「宗教的装置」のひとつとして成立したものである。殊に成立時からの寺社における勧進活動とのかかわりの深さから、勧進の場となるだけではなく、茶屋自らが勧進を行うようになり、さらには諸税集金活動など都市領主の経済活動の一端を担うようにもなる。