近代日本において、兵士はいかにして兵士となったのか。兵士を兵士たらしめたシステムとはどのようなものだったのか。本稿では、昭和初期の日本において戦争を遂行するための土台であった「兵事行政」がいかなる構造を有していたのかについて分析をおこなう。兵事行政は、徴兵検査や動員など軍の根幹に 係る業務を遂行するための行政機構を指す用語であり、地域と軍とを結ぶものとしても注目される。昭和初期は郡役所廃止・兵役法改正など兵事行政が大きな 変化を被った時期である。本稿は、これらの変化を遂げたのちの兵事行政の構造とその実態について、兵事行政を担った各機関の業務内容と役割の分析から明らかにし、当該期における総動員体制構築過程の一端を叙述するものである。