洛北史学
Online ISSN : 2436-519X
Print ISSN : 1345-5281
論説
平安期邸宅における所有と居住
高 正樹
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2014 年 16 巻 p. 1-22

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抄録

摂関・院政期に所有と居住が分離していることは先行研究で明らかにされてきた。本稿は、その関連について検討しようとするものである。分析ツールとして邸宅に関わる「本所」と女院号宣下を用いた。 「本所」については、居住している邸宅の券文を所持し、所有することがその要件として考えられているが、それは絶対条件よりも相対的に優先されるものであった。また、「券文所持」の目的として、その邸宅の居住があげられる。女院号宣下における「本所の儀」は院号が与えられる者の居住邸宅で行われる。 女院号は「御在所」が冠されることが原則であり、「本所の儀」も女院号である「御在所」で行われることが前提として考えられていたのであろう。共通して 言えることは、居住の重要性である。摂関・院政期は、邸宅を所有すること、使用することを比較した時に、使用することが重視されている社会であり、使用が所有認識の基底にあると考えられる。

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© 2014 洛北史学会
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