洛北史学
Online ISSN : 2436-519X
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論説
祇園御旅所と「とミくばり」の近世
大経師降屋内匠以前
村上 紀夫
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2020 年 22 巻 p. 1-20

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抄録

京都祇園社の御旅所にいた「とミくばり」の近世初頭における具体像について論じる。祇園社の御旅所「大政所」は神を迎え御供を調進する在地側のセンターであったと瀬田勝哉によって指摘されている。その後、御旅所の組織が解明され、大政所神主家の末裔とされる中世に「とミくばり」と呼ばれ、「降屋(ふるや)」と名乗る人びとの存在が明らかになった。しかし、降屋の実態については未だ解明されていなかった。 本稿では、祇園御旅所の降屋が貞享二年以降、大経師に任じられたことを明らかにし、それまでに経師として成功し、日蓮宗寂光寺の檀那で白楽天町の有力町人であったことを指摘した。こうして近世の「降屋」の具体像が史料から明らかになったことで、瀬田勝哉が想定していた、中世の大政所について、「長者的性格を帯びたもの」による「宮座的」な存在の実態解明につながるであろう。

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