洛北史学
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論説
オランダ資金と大西洋貿易
一八世紀後半イギリスの国際収支をめぐって
坂本 優一郎
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2002 年 4 巻 p. 44-66

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抄録

従来、一八世紀のイギリスと大西洋経済との関係は、「イギリス商業革命」論に代表されるように、おもに海外貿易の発達を中心に論じられてきた。たしかに、イギリスの海外貿易は飛躍的な拡大を見せ、また、アメリカや西インドを中心とする新世界貿易の成長が非常に重要な位置を占めた。しかし、大西洋を横断したのはヒトやモノだけではない。カネも海外貿易と共に流れたのである。 本稿では、イギリスの海外貿易の拡大をもたらした旧帝国体制の形成資金に注目しつつ、資本の流れ、海外貿易、帝国の形成再編との関係を「オランダ資金」を例に論じた。この資金とそれを担う集団との「複合体」は、イギリス旧帝国の形成と崩壊に密接に関係し、建国直後のアメリカ合衆国にも流入することによって、イギリス旧帝国崩壊後も大西洋経済の発展を支えた。それによってイギリスは旧帝国の「負の遺産」である対外債務を清算し、逆に海外へ資本輸出を開始することになる。

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© 2002 洛北史学会
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