甲殻類の研究
Online ISSN : 2433-0108
ISSN-L : 0287-3478
クルマエビの鰓に寄生するProtozoa(原生動物)について
高田 継男
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1971 年 4.5 巻 p. 217-224

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抄録

クルマエビの養殖が盛んになるにつれて,養殖池でエビの鰓が黒変する病気が出,大きな被害をもたらすことがある。この場合に,鰓には有機泥,下等藻類やその他細菌等がかなりの量寄生や附着している。さらにそれらと混ってProtozoaの寄生が非常に多い。これも鰓病の一因と思われるので,今回若干の知見を得たので報告する。この研究は1661年と1968年に養殖されているクルマエビ125尾と天然のもの5尾(東京湾産)について鯛の生鮮なものについて観察し,その後核染色を行なって調査した。この結果寄生Protozaの種類は6属11種のものが観察された。全般に,寄生の状態はEpistylidaeのものがその大半(約80%)を占め,他の種類はあまり多くなかった。今回の調査では,寄生種,寄生数等の間には,季節により,又,養殖クルマエビと天然のものとの間には特徴的な差が認められた。即ち,初夏から急激に寄生種,寄生数共に増加し,10月に入ると漸次減少して行くこと,養殖クルマエビには,半鹹水性,浅海性のProtozoaが寄生しているのに,天然のものでは浅海性,外洋性の種類が見られ,寄生数も天然産のものは非常に少ないことであった。その他,鰓には下等藻類や有機泥が附着しているが,Protozoaとの相関はほぼ反比例の状態と考えられるが明確な結果は得られなかった。又脱皮による鰓の浄化が行なわれても数日にしてProtozoaの寄生が観察された。幼エビ(5cm以下)と成エビ(約10cm以上)とではあまり差はなかったが,活動力の盛んな幼エビ程鰓の泥等の附着,Protozoaの寄生数共に少ないように思われた。

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© 1971 日本甲殻類学会
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