発展途上国の農業問題といえば，従来は食糧問題であり貧困問題であったが，いまや環境問題と密接に関係するようになった．第1に，貧困な農民による耕地拡大が途上国での森林伐採の大きな原因である．第2に，森林環境を回復するためには森林保護と植林を推進する必要があるが，その担い手は農民である．第3に，温室効果ガス排出を削減する有力な手段としてバイオ燃料が注目されているが，その原料は農産物である．第4に，気候変動によって病虫害の蔓延，洪水や早魃の頻発等がおこり，食糧生産が大きな打撃を受けることが予想されている．つまり貧しい国々での食糧生産は，地球的規模での気候変動に影響を与えるとともに，それから影響を受けざるを得ない状況になっているのである．
