抄録
非麻痺側股関節伸展,足関節底屈運動ができなかった片麻痺症例に対して土踏まずの下に角材を位置させ梃の原理を用いた踏み返し練習を実施し(以下,踏み返し練習),その即時的効果について検討した.症例は60歳代男性,被殻出血で左片麻痺を呈した.45病日まで段階的難易度調整による歩行練習を実施したが,非麻痺側股関節伸展が不十分であり,非麻痺側による麻痺側の振り出しができなかった.46病日から踏み返し練習を開始した.介入初日には,平行棒支持,AFO装着,3動作歩行において転倒防止の介助が必要であり,歩行速度は12m/minであった.2日目には2動作非麻痺側前型歩行が監視下で可能となった.3日目の53病日には,AFO装着下でT字杖にて2動作非麻痺側前型歩行が可能となった.この時,踏み返し練習前歩行速度は20m/min,21歩,練習後は24m/min,19歩であった.55病日における評価では運動麻痺,感覚障害,バランスなど46病日と大きな変化は認めなかったが,歩行速度は36.2m/min,6分間連続歩行距離は180mであった.短期間の介入で,大幅な歩行能力の改善を認めたことから今回の踏み返し練習は,非麻痺側で麻痺側を振出す動作の学習を促すうえで有効なものと考えられた.加えて,この歩行パターンが歩行能力与える影響の大きさが示された.