リハビリテーションと応用行動分析学
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最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • -健側下肢による患側下肢の振出し-
    山﨑 裕司
    2025 年11 巻 p. 1-4
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    患側の随意性がない片麻痺者であっても健側股関節伸展と足関節底屈運動によって上体とともに患側下肢を前方に振り出すことができる.この考え方に基づく片麻痺の歩行練習を2年にわたって実施してきた.その結果,考えていた以上の効果が報告され始めている.ここでは最新の知見から編み出された新たな片麻痺の歩行練習の方法とその効果について解説する.
  • 〜自己刺激行動を代替行動分化強化へ高次化した取り組み〜
    川村 立
    2025 年11 巻 p. 5-9
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    今回,自己刺激行動を認める無発語自閉スペクトラム症男児1例を経験した.A児は常に紙破りを行っており,中断を求められることで激しい癇癪に繋がっていた.言語聴覚士は,問題行動のアセスメントや言語行動への介入を目的に応用行動分析学を参考にしてA児への介入を実施した.しかし,新型コロナウイルスの影響により継続した来院が困難となった.そこで,幼稚園の保育士と連携し,自己刺激行動を高次化する取り組みを言語聴覚士から提案した.その結果,自己刺激行動は代替行動分化強化により他者から認められる行動へと変化し,卒園前の最後の発表会においても保育士と協働で作成した作品が劇の背景として飾られ,問題行動を社会的意義の高い行動へ移行する手続きに成功した.症例に直接評価・訓練を施す機会に恵まれなくとも,言語聴覚士が応用行動分析学を用いることや他職種と連携を行い,多様なニーズに応える支援体制が重要と思われた.
  • -ステップ練習と反復歩行練習の効果-
    鳥居 美里, 山﨑 裕司, 﨑山 誠也, 山中 大河
    2025 年11 巻 p. 10-13
    発行日: 2025/04/02
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    健側で振り出す歩行練習が筋緊張の高い片麻痺患者の歩行能力に与える影響について検討した.症例は,右心原性脳塞栓症により左片麻痺を呈した60歳代後半の男性である.X+43病日,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)は下肢Ⅱ-Ⅲであった.歩行は長下肢装具装着下で,平行棒内において要介助であった.麻痺側立脚後期から遊脚期にかけて,下肢クローヌスの出現が著明であり,短下肢装具への変更は不可能であった.X+46病日より健側で振り出す歩行練習を開始.下腿三頭筋の緊張を緩める目的で麻痺側踵に補高1㎝を挿入した.健側は足底全体に補高1㎝を挿入した.健側股関節伸展と足関節底屈による患側下肢のステップ練習,健側下肢のステップ練習,その連鎖化後,平行台周囲の手掌支持による3動作歩行を実施した.ステップ練習前,平行台1周(約11m)に約50秒を要した.しかし同日のステップ練習後,2セット目には30秒まで短縮した.X+98病日より,平行台周囲のon handから指腹支持,T字杖2動作前型歩行に移行できた.また,下肢クローヌスは消失していた.介入終了時点において下肢BRSはⅢ-Ⅳであった.Modified Ashworth Scale(以下,MAS)は,足底屈が2から1+へ低下した.6分間歩行距離は155m,短下肢装具とT字杖を利用して屋外歩行が自立となった.以上の経過から健側で振り出す歩行練習は,痙性を軽減させ,歩行能力を改善させる可能性がある.
  • -角材による足関節踏み返し練習の効果-
    豊田 一成, 山﨑 裕司, 加藤 宗規, 小田 朋美, 土屋 晃世, 辛 寿全, 辛 秀雄
    2025 年11 巻 p. 14-16
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    非麻痺側股関節伸展,足関節底屈運動ができなかった片麻痺症例に対して土踏まずの下に角材を位置させ梃の原理を用いた踏み返し練習を実施し(以下,踏み返し練習),その即時的効果について検討した.症例は60歳代男性,被殻出血で左片麻痺を呈した.45病日まで段階的難易度調整による歩行練習を実施したが,非麻痺側股関節伸展が不十分であり,非麻痺側による麻痺側の振り出しができなかった.46病日から踏み返し練習を開始した.介入初日には,平行棒支持,AFO装着,3動作歩行において転倒防止の介助が必要であり,歩行速度は12m/minであった.2日目には2動作非麻痺側前型歩行が監視下で可能となった.3日目の53病日には,AFO装着下でT字杖にて2動作非麻痺側前型歩行が可能となった.この時,踏み返し練習前歩行速度は20m/min,21歩,練習後は24m/min,19歩であった.55病日における評価では運動麻痺,感覚障害,バランスなど46病日と大きな変化は認めなかったが,歩行速度は36.2m/min,6分間連続歩行距離は180mであった.短期間の介入で,大幅な歩行能力の改善を認めたことから今回の踏み返し練習は,非麻痺側で麻痺側を振出す動作の学習を促すうえで有効なものと考えられた.加えて,この歩行パターンが歩行能力与える影響の大きさが示された.
  • 田辺 尚, 遠藤 晃祥
    2025 年11 巻 p. 17-22
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    介護施設に勤務する理学療法士は,事務職員としての業務を熟しながら,医療機関のように医師の指示が無い中で,自らの知識や経験を活かし,入居者の生活の継続に必要な身体機能が維持できるように関わる必要がある.入居者によっては身体機能面の理由により,動作に介助が必要な場合には,介護士から援助を受けながら生活する.そのため,介助量の匙加減は介護者に委ねることになるため,場合によっては過介助になってしまうこともある.その結果,適切な介助量ではない場合,不必要な廃用症候群に繋がってしまうだけでなく,援助頻度によっては関わる事がお互いにとってストレスとなってしまい嫌子と機能する場合もある.今回の介入では,業務上の様々な制約のある中で,介入方法や他部署からの援助を受ける環境を設定する事で,理学療法士の介入頻度が医療機関と比べて少ない特養であっても,入居者の歩行能力の改善により生範囲の拡大に繋がると共にQOL向上に繋がることができた.
  • -重症右片麻痺症例における検討-
    山中 大河, 山﨑 裕司, 﨑山 誠也, 鳥居 美里
    2025 年11 巻 p. 23-26
    発行日: 2025/04/01
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    今回,最重度右片麻痺を呈した症例に対して,健側で振り出す歩行練習を適応し,その効果について検討した.症例は70歳代後半の男性.発症前に筋萎縮性側索硬化症の診断を受けていた.X月Y日に構音障害,右片麻痺が出現,左被殻出血の診断がなされた.22病日,リハビリテーション目的で当院へ転院となった.25病日の評価では,意識清明,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)は,下肢・上肢・手指ともⅠであった.重度混合性失語,半側空間無視や注意障害が見られた.基本動作は全て介助が必要であった.段階的難易度設定による立位保持練習によって30病日には手掌支持による立位保持が長下肢装具装着(以下,LLB)下で可能となった.次いで,健側股関節伸展と足関節底屈運動による患側ステップ練習から開始し,健側ステップ練習,そして連鎖化を図った.58病日から平行台手掌支持での歩行練習を開始.90病日,LLB装着下で歩行が近位監視下で可能となった.131病日に短下肢装具での歩行練習開始,146病日には監視下での杖歩行が可能となった(歩行速度0.26m/秒).182病日時点でも,BRSはⅡに止まり,重度片麻痺は残存した.左膝伸展筋力は0.23kgf/kgであった.重度右片麻痺,重度混合性失語,健側筋力低下という悪条件であったにもかかわらず,屋内杖歩行まで到達できたことから,健側で振り出す歩行練習は有効に機能したものと考えられた.
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