リハビリテーションと応用行動分析学
Online ISSN : 2759-2588
Print ISSN : 1884-2658
患側下肢を健側で振り出す歩行練習の効果
-重症右片麻痺症例における検討-
山中 大河山﨑 裕司﨑山 誠也鳥居 美里
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2025 年 11 巻 p. 23-26

詳細
抄録
今回,最重度右片麻痺を呈した症例に対して,健側で振り出す歩行練習を適応し,その効果について検討した.症例は70歳代後半の男性.発症前に筋萎縮性側索硬化症の診断を受けていた.X月Y日に構音障害,右片麻痺が出現,左被殻出血の診断がなされた.22病日,リハビリテーション目的で当院へ転院となった.25病日の評価では,意識清明,Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)は,下肢・上肢・手指ともⅠであった.重度混合性失語,半側空間無視や注意障害が見られた.基本動作は全て介助が必要であった.段階的難易度設定による立位保持練習によって30病日には手掌支持による立位保持が長下肢装具装着(以下,LLB)下で可能となった.次いで,健側股関節伸展と足関節底屈運動による患側ステップ練習から開始し,健側ステップ練習,そして連鎖化を図った.58病日から平行台手掌支持での歩行練習を開始.90病日,LLB装着下で歩行が近位監視下で可能となった.131病日に短下肢装具での歩行練習開始,146病日には監視下での杖歩行が可能となった(歩行速度0.26m/秒).182病日時点でも,BRSはⅡに止まり,重度片麻痺は残存した.左膝伸展筋力は0.23kgf/kgであった.重度右片麻痺,重度混合性失語,健側筋力低下という悪条件であったにもかかわらず,屋内杖歩行まで到達できたことから,健側で振り出す歩行練習は有効に機能したものと考えられた.
著者関連情報
© 2025 リハビリテーションのための応用行動分析学研究会
前の記事
feedback
Top