本稿の目的は、「ニューエイジ」の町として知られる、イギリスの「聖地」グラストンベリーにおいて、これまで取り上げられてこなかった地元民とニューエイジ産業に携わる移住者との関係に注目して、両者の共存のあり方とそこから生じていることについて考察することである。これまでの聖地研究や観光研究では、その土地に暮らす住人と巡礼者/観光客の関係については論じられてきたが、地元民とその土地に移住した人々との関係は議論されてこなかった。本稿では、ホスト・ゲスト論における「メーカー」という視点や、移民研究における移民の受容過程に関する知見を参考にしながら、地元民がニューエイジ産業に向けたまなざしに焦点を当てる。そして、積極的に関係をつくらない共存のあり方が結果としてニューエイジ産業の隆盛を招いていることと、地元民が移住者を受け入れる過程でニューエイジ産業を目的にやってくる訪問者を無視できないことを指摘する。