宗教と社会
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論文
四国遍路と遍路道の再生―失われた道の「再発見」―
河野 昌広
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キーワード: 四国遍路, 資源, 記憶, 再生, 遍路道
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2014 年 20 巻 p. 61-71

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抄録

戦後の四国遍路の歴史をたどると、モータリゼーション以降、バスや自家用車などの車による巡拝が中心であった。しかし1990年代から「歩き遍路」が増大し、四国遍路ブームの主な担い手となっている。そのような中で、旧遍路道とよばれる、「歩き遍路」用の遍路道を復興・再生させる動きが四国各地で見られている。モータリゼーションにともない、政策による道路整備がすすみ、新たな国道、車道が整備される中で、旧来の生活道であった山の道などの中には次第に人通りも無くなり、獣道と化して消滅したものもあった。ところが「歩き遍路」の増大により、車の道から歩くための道への要請が高まり、失われた道の「再発見」が促されることになった。本稿では「柏坂遍路道」と「あしずり遍路道」の事例をとりあげ、遍路道の再生について論じる。道は元来、使われなければ廃れていくものであり、一方で、使われれば再生する。しかし再生するためには一定の条件が必要で、本稿の事例分析を通して導出されたのは、遍路社会の要請、物理的資源(道標などの装置)、記憶資源(道に関する人々の記憶)、人的資源(道を再生させる担い手の存在)、であった。

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