宗教と社会
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論文
先祖祭祀の変容と寺院の参与―永代供養墓の建立と意図に注目して―
辻井 敦大
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2018 年 24 巻 p. 1-15

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抄録

本稿は、寺院における永代供養墓の建立過程と建立の意図を明らかにすることを通して、日本社会における先祖祭祀の変容の一端を考察する試みである。これまでの先行研究では、先祖祭祀の変容を検討する上で家族変動との関連を検討することに注目が集まり、先祖祭祀の一端を担う寺院に注目したものは限られていた。これに対して本稿では、人口流出地域である兵庫県美方郡新温泉町と人口集中地域である東京都区部の寺院の事例研究を行い、永代供養墓の建立過程とその意図を分析した。その結果から、第一に寺院は「家」に限られない血縁を中心とした家族、親族間の「縁」、および寺院を中心とした寺院と檀家の「縁」を重要視しており、それを支えるために永代供養墓を建立していることを明らかにした。そして第二に、寺院が無縁となった死者の「死後の安寧」を保証するという論理は、戦前期に作られた納骨堂と現代的な永代供養墓の間で大きな違いがないことを示した。

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