宗教と社会
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論文
ムスリムに対する受容的態度の日韓における規定要因―統合脅威理論の立場から―
向井 智哉金 信遇木村 真利子近藤 文哉松木 祐馬
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2020 年 26 巻 p. 1-16

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抄録

本研究では、統合脅威理論(Integrated Threat Theory: ITT)に基づき、近接要因として現実的脅威、象徴的脅威、集団間不安を、遠隔要因として同化主義と接触経験を取り上げ、日韓におけるムスリムに対する受容的態度を予測する仮説モデルを構成し、その妥当性を検討した。日本(n = 330)と韓国(n = 339)のデータを用いて、現実的脅威と象徴的脅威を測定する項目を対象に探索的因子分析を行った結果、ITTの想定とは異なり、「全般的脅威認知」、「権利付与」、「類似性認知」の3因子が抽出された。また、共分散構造分析による多母集団分析を行ったところ、これらの3因子は同化主義と関連すると同時に、受容的態度とも関連することが示された。さらに、両国間で測定不変性が確認された。現実的脅威認知と象徴的脅威認知が区別されるというITTの想定は支持されなかった一方で、脅威認知の3因子はムスリムに対する受容的態度を規定するにあたって重要な役割を果たすことが示された。

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