宗教と社会
Online ISSN : 2424-1601
Print ISSN : 1342-4726
ISSN-L : 1342-4726
26 巻
選択された号の論文の45件中1~45を表示しています
論文
  • 向井 智哉, 金 信遇, 木村 真利子, 近藤 文哉, 松木 祐馬
    2020 年 26 巻 p. 1-16
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本研究では、統合脅威理論(Integrated Threat Theory: ITT)に基づき、近接要因として現実的脅威、象徴的脅威、集団間不安を、遠隔要因として同化主義と接触経験を取り上げ、日韓におけるムスリムに対する受容的態度を予測する仮説モデルを構成し、その妥当性を検討した。日本(n = 330)と韓国(n = 339)のデータを用いて、現実的脅威と象徴的脅威を測定する項目を対象に探索的因子分析を行った結果、ITTの想定とは異なり、「全般的脅威認知」、「権利付与」、「類似性認知」の3因子が抽出された。また、共分散構造分析による多母集団分析を行ったところ、これらの3因子は同化主義と関連すると同時に、受容的態度とも関連することが示された。さらに、両国間で測定不変性が確認された。現実的脅威認知と象徴的脅威認知が区別されるというITTの想定は支持されなかった一方で、脅威認知の3因子はムスリムに対する受容的態度を規定するにあたって重要な役割を果たすことが示された。

  • 山岸 哲也
    2020 年 26 巻 p. 17-31
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    本論では、シンクレティズムを作業仮説として民俗宗教の文脈で再定位する。概念としてのシンクレティズムは、その曖昧さやその内容のぶれやその前提に対する批判が数多くなされてきた。本論では、これまで批判されてきたシンクレティズムという概念について、「雑種性は純粋性に先立つ」ことと「民俗宗教の混淆的な基盤」という議論からその可能性を論じ、新しい作業仮説としての内容とその前提を提示する。そのうえで、なぜ異なる宗教の併存が可能となっているのか、異なる宗教が併存しうる状況とはどのようなものなのかについて、先行研究で提示されているインド・シッキム州のティンチム地区における民俗宗教の事例をシンクレティズムとして捉え直して考察する。そして、「内部における複数性を保持する単一的なもの」という状況であるがゆえに併存が可能となるという考察を導くことで、シンクレティズム概念を改めて検討する。

  • 渡部 奈々
    2020 年 26 巻 p. 33-47
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2022/06/04
    ジャーナル フリー

    アルゼンチンでは1976年から83年にかけて軍政による大規模な人権侵害が行われ、数万人が拉致・拷問・殺害の犠牲となった。民政移行期に入るとカトリック教会は社会に向けて「国民的和解」を提唱し、軍政指導者はそれを自らの恩赦の根拠として利用したが、人権侵害の被害者は真実の究明と加害者の処罰なしの和解を拒絶した。他方で、加害者の遺族らはアルゼンチン国民「皆が犠牲者」であると訴えて、軍人たちが公的記憶に加えられることを求めた。本稿では、アルゼンチン司教団が提唱した和解のキリスト教的解釈を検討しながら、民政移管後の各アクター(軍政指導者、軍人遺族、カトリック司教団、人権侵害の被害者)の言説を分析し、「加害者」「被害者」「犠牲者」といったアクター自らのポジショニングによって、異なる国民的和解の解釈が形成されていく点を明らかにした。そして、「共産主義者」として軍政に暗殺されたアンジェレリ司教の列福が、カトリック教会とアルゼンチン社会の和解の進展にもたらす影響を考察した。

書評とリプライ
1 『現代人の信仰構造』の成果と課題
2 宗教をめぐる調査・研究の倫理―現代的課題にどう向き合うか―
ブックレビュー
feedback
Top