宗教と社会
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近代キリスト教海外伝道方針の確執 : 異文化適応をめぐる宣教師と母教会の温度差
大江 満
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2003 年 9 巻 p. 113-131

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抄録

キリスト教研究は「受容」サイドの観点が主流である。本稿は一枚岩でない「宣教」サイドに注目し、海外宣教師と母教会伝道機関による布教-伝道方針の確執に焦点をあてる。その確執は、母教会の教派入植が至上目的であった20世紀初期までの海外伝道において、現地の宣教師が異文化適応主義を認めるよう喚起した提言を、母国の伝道機関が一時的にも考慮した稀有な現象であった。だが、母教会からの現地への母文化移出の抑制というフィードバックは永続しなかった。西洋文明優越の自負が磐石な進化論的発想のなかで、人類学は未開の現地を「原始」として保存しようとしたが、布教は未開を開化に改変する伝道手段を是認したからである。本稿は、異文化と異教を同義として禁止する傾向にある母機関主導の偏向方針が、異教を否定しながらも異文化は尊重する海外宣教師の自由な裁量活動の抑制に連動し、現地でのキリスト教土着化をはばむ一因となっていたことに論及する。

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