"花街 "は、日本の伝統文化を包括的に継承する貴重な歓楽空間である。本研究は、新潟県における近代花街の変遷を明らかにすることを目的とし、近代花街を主に構成した料理屋・待合茶屋の軒数及び芸妓数の推移を地区単位で明らかにする。主な結果は以下の通りである。1)料理屋数は1893年から1930年まで増加傾向を示したが、1930年をピークに減少し、芸妓数の推移と正の相関を示した。一方、待合茶屋は明治中期に減少傾向を示したが、明治後期から昭和初期にかけて増加した。2)料理屋と芸妓は新潟県内の51地区すべてで見られ、その内新潟が最も多く、次いで長岡、高田の順で多かった。3)全国的な傾向と比較すると、大正期から昭和初期にかけての増加・減少傾向はどの業種も概ね同様だが、新潟県内の方が料理屋・芸妓数のピークと減少の始まりがやや早いことが確認された。