Review of Polarography
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対流電極による流体力学的ボルタメトリー(I)対流電極の限界電流式
鈴木 諄亮
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1968 年 15 巻 1-2 号 p. 21-27

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抄録
 溶液流動,静止固体電極における限界電流式は式(1)により示される.
iτ=KnFACD2/3μ1/2ν-1/6d-1/2
ここにvは流速(cm/sec),D2/2 μ1/2 ν-1/6 d-1/2は電解液の動粘性係数(cm2/sec),dは電極の大きさに関係する値(cm)である. 最近,松田は流体力学的考察から層流の流れに垂直においた円柱断面の一部を電極とする場合の限界電流式を理論的に導いたが,それによると式(1)の比例定数Kは0.959である. 本装置の場合,電極表面の液流動速度は,その構造上から厳密に測定する事は困難であるが,その速度は回転円板線速度に比例すると仮定して,松田の理論式を用いれば大略の値を求める事は可能である.これより求められる流速よりReynoldsnumberを求めると,電極近傍における液流動状態はほぼ層流である事が推定される. 本研究においては,電極近傍の流速と回転円板線速度との問に成立するとした比例定数を考慮した場合の式(1)の定数Kの値を実験的に求め,本電極における限界電流式を誘導した. 0.5M塩化カリウム溶液中のフェロシアンイオンの酸化過程における限界電流値を求め,式(1)に代入,その結果,K=0.612±0.005となり,本電極において得られる限界電流は式(2)にしたがうと推定された.
iτ=0.61nFACD2/3μ1/2ν-1/6d-1/2
(2)  また,これを0.5M塩化カリウム中のフェリシアンイオンの還元過程に適用し,その実験値と式(2)による計算値と比較した結果,ほぼ満足すべき一致(標準偏差,0.82%)を示した.
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© 日本ポーラログラフ学会
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