抄録
太い白金線端をガラス管にシールし,3.9cm2の面積上に,ヨウ化カリウムの硫酸酸性溶液からヨウ素が吸着する様子をしらべた。白金表面は,まつ一定の陰性,陽性の分極化によつて清浄にしたのち,なお所定の酸化,還元及び部分的還元処理を施した。酸化には,薬品による酸化処理の場合も比較の対象とした。 吸着後の白金表面のヨウ素の分析は,131Iのガンマ線を用いシンチレーシヨン計数によつて行つた。 一定時間,溶液中に浸漬してのち白金表面を水洗したとして,一般にヨウ素の吸着は酸化前処理白金においてては,還元処理のものよりも多いことがわかつた。そして,吸着時の液温を上げると,吸着容量及び吸着速度は共に上るが,その程度も,酸化処理白金の場合に著しく,還元処理のものや部分的還元処理のものでは,ほとんど効果が見受けられなかつた。 なお吸着試験溶液に窒素を通じ,溶液酸素を追出したものについての試験も行つた。還元処理白金では脱気しない場合に比して著しく吸着量が減少し,酸化処理のものでは,さほどもなかつた。このことから,溶液酸素は吸着途上でもその酸化力によつて吸着を助けるものと考えられる。