抄録
交流ブリッジ方式の交流ポーラログラフ装置は既に相当広く実用化されているが,本文では本装置を用いて行ったポーラログラフ条件についての実験結果を報告することとした.対象とした試料は非鉄金属鉱業の分析面で利用される支持電解質ならびに復極剤を用いた.すなわち 1N塩酸支持電解質中のビスマス,銅,鉛; 1N塩酸,1M硫酸ナトリウム支持電解質中のアンチモン; 1.5N水酸化ナトリウム,1Mシアン化カリウム支持電解質中の鉛,ニッケル;0.45N過塩素酸支持電解質中の銅,鉛;1M塩化アンモニウム1Mアンモニア溶液中の銅,亜鉛; 1M塩化カリウム支持電解質中の亜鉛を試料溶液とした.溶存酸素の影響,重星査電圧の人いさの影響,平衡容量の大いさの影響,電極間距離の影響,電解液温度の影響,水銀滴下時周の影響について検討し,大略つぎの結論を得た. 1.溶存酸素の影響は小さく工業分析上酸素除去の必要は少ないこと. 2.平衡容量2μF以下ではその大いさの波高への影響は小さい場合が多いこと. 3.重畳鴬圧については5mVの場合,波高は一般に低く,10mV.,20mV.において高く,30mV.の場合は低い.ただし直流ポーラログラフ法の場合に極大を生ずる試料については交流ポーラログラムでは5mV.の場合が最も高い.検量線の直線性は重畳電圧が大の場合がよい.実際上重畳電圧の大いさは20mV.程度が無難である. 4.電極間距離5~20mm.範囲内では電極間離の差は波高に影響を与えない. 5.電解液温度の波高への影響は直流ポーラログラフ法の場合に比較して小さかった. 6.ポーラログラムの波高と水銀滴下時間,水銀流出量との関係は理論的結論ど一致,波高はm2/3t2/3に比例した.