2006 年 33 巻 2 号 p. 76-81
廃用性筋萎縮の予防法としてプレコンディショニング運動の制御機構について,タンパク質分解に作用するユビキチン-プロテアソーム系,及びタンパク質新生・修復に関与する熱ストレスタンパク質(HSP)について検討した。ラットを用いて,1)2週間の尾部懸垂群(HS),2)HS直前にトレッドミル走行を行い2週間の尾部懸垂をした群(ExHS),及び3)対照群に分類した。ヒラメ筋を摘出して,筋原線維タンパク質量を計測し,リアルタイム定量PCR法でユビキチンリガーゼE3,及び72k-Da HSP(HSP72)のmRNAを測定した。筋原線維タンパク質量は,対照群と比較してHSとExHSでは有意な低下を示したが,ExHSではHSに比較して有意に高値を示した。一方,ユビキチンリガーゼE3 mRNAは,対照群と比較してHSで有意に増加し,ExHSでは増加を示さなかった。また,HSP72 mRNAは,対照群と比較してHSで有意に減少し,ExHSでは減少が抑制された。プレコンディショニング運動はユビキチンリガーゼE3の活性化を抑制し,HSPの低下を減衰させた。これらの結果からプレコンディショニング運動は尾部懸垂中の筋タンパク質分解系の活性化を抑制する制御機構が働くことが示唆された。